(愛知保険医新聞2020年3月25日号)
新型コロナウイルスの感染拡大による不安と混乱が続いている中で、4月から診療報酬が改定される。協会・保団連では、医療機関が新型肺炎への対策に追われ、公的な周知の機会である厚生局の集団指導が中止となる状況を鑑み、厚労省に対して改定延期の要請を行ったが、予定通り3月5日には、点数表の告示や留意事項通知、施設基準の告示・通知などが発出された。協会の新点数説明会も中止せざるを得ず、改定内容の理解をより深める場を設けられなかったことは、大変残念である。
今次改定は、別枠で設けられた救急病院における勤務医の働き方改革の対応分を加え、診療報酬本体は前回改定と同じ0.55%の引き上げとなったが、薬価・材料価格引き下げの財源が反映されず、全体では4回連続のマイナス改定となった。しかし、患者・国民に安心・安全な医療を提供するために奮闘する医師・医療従事者の労働環境の改善や不合理是正を行い、医療提供の質を向上させていくためには、医療費総枠の拡大が必要であり、今後も診療報酬の大幅な引き上げを求めていきたい。
改定内容では、外来は「かかりつけ医機能」の強化がされている。前回改定で設けられた機能強化加算の要件の追加、地域包括診療加算の要件緩和、「かかりつけ医」との情報提供を評価した診療情報提供料Ⅲの新設などが行われている。また入院医療では、急性期病床の「重症度、医療・看護必要度」の基準や、回復期リハ病棟での実績指数が引き上げられるなど、病床機能の分化と病床削減のための改定がより強固に推し進められている。
一方、我々が要望していた初・再診料や入院基本料の引き上げは全く行われず、医療機関の経営を底上げする改定にはならなかった。しかし、こうしたもとでも協会・保団連の運動により、わずかではあるが静脈血採取料や調剤料、耳管処置や鼻処置、皮膚切開術などの汎用点数が引き上げられ、保険医の要望が一部実現している。引き続き、改善を求める声を届けていくことが重要である。
診療報酬は、今回の改定でもますます複雑となり、十分な周知期間も設けられず、医療機関に負担を強いるものとなっている。協会・保団連では、全国の役員・事務局が力を合わせて会員の医療機関で改定内容への理解がすすむように、分かりやすく正確なテキストを発行する。ぜひご活用いただくとともに、診療報酬改善や不合理是正を求める現場からの声をお寄せいただきたい。