2019年11月28日

診療報酬改定-堂々と大幅引き上げを訴えよう

(愛知保険医新聞2019年11月25日号)

来年4月の診療報酬改定に向けての議論が本格化している。全体の改定率は年末に厚労相と財務相が合意して閣議決定される見通しだ。
社会保障予算の削減を求める財務省からは、マイナス改定に向けて強い圧力がかけられている。財務相の諮問機関である財政制度等審議会の財政制度分科会では、診療報酬改定で「2%台半ば以上のマイナス改定」が必要という提案がされた。この会議では、受診時定額負担や薬剤費の一定額までの全額自己負担導入、75歳以上高齢者の窓口負担を2割へ倍加、といった具体的な内容に踏み込んだ提言も出されている。
厚労省サイドも、社会保障審議会の医療保険部会に示した改定に向けての基本方針で「経済・財政との調和」を掲げ、マイナス改定も視野に入れた議論が行われている。
こうした背景には、安倍政権が7年間で社会保障費を総額4兆2700億円も削減してきたことがある。「誰もが安心して暮らせる全世代型社会保障」を構築するとしているが、狙いは医療や介護をはじめとする社会保障のさらなる給付削減・負担増であることは明らかだ。
安倍首相はアベノミクスで企業収益が2012年以降35兆円拡大したとうそぶいた。しかし、年収200万円以下のワーキングプアは12年連続で1,000万人を超えており、格差と貧困は拡大している。さらに消費増税で国民の暮らしはますます厳しくなっている。
そもそも経済・財政が厳しいからといって社会保障予算にツケを回すことは根本的な誤りである。格差拡大を是正するのが社会保障の役割であり、見直すべきは大企業に空前の利益をもたらし、国民に痛みを強いている政策だ。
この間の改定の推移から見ても診療報酬の引き上げは当然だ。
小泉内閣時代の2002年から直近の2018年まで9回の改定で、診療報酬は累計で10.066%も引き下げられ、医療現場に大きな影を落としている。2019年の医療経済実態調査でも、医療機関が人員不足や過重労働を抱えながら、人件費を抑え何とか経営している状況は改善されていないことが明らかだ。
診療報酬は、医療機関の経営の原資となるだけでなく、患者が受ける医療の水準を決定づけるものでもある。過去のマイナス改定分を取り戻し、国民医療を向上させていくためにも、協会・保団連が求める10%以上の引き上げは、保険医が堂々と胸を張って訴えるべき要求だ。

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