2019年7月6日

参議院選挙-負担増と自己責任の流れに審判を

(愛知保険医新聞2019年7月5日号)

老後の資金が年金だけでは足りず2,000万円必要とした金融庁審議会報告書が大きな問題となっている。政府は、報告書をなかったかのようにして取り合わない姿勢だが、報告書が示した老後生活・年金をめぐる現状認識は、誤っていない。
夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯がモデルだが、(1)厚生年金加入者を前提にしていて、国民年金ならば不足額はさらに増える、(2)要介護状態の費用見込み約1,000万円、住宅リフォーム約500万円、葬儀代約200万円などは含まれず、さらに不足額は増える、(3)40歳代のケースならば、不足額は3,000万円を超える―という問題点が考えられる。
この問題の背景には、年金計算の仕組みに、(1)給付額を物価上昇以下に抑え、(2)賃金のマイナス分以下に抑える、(3)労働者の減少分も給付削減に反映―が設定されていることがあげられる。年金給付額は絶えず減り続ける仕組みにある。
年金制度という社会保障制度の大きな柱が、先細りの構造であり、就労や介護などの不備がそのまま将来不安に繋がる図式は、政府・与党の「100年安心」「全ての世代が安心できる社会保障」は、画餅に過ぎないことを端的に示している。
そして、報告書が示した解決処方は、足りない老後資金は貯蓄や投資などの自己責任を迫るものだというところにも、現政権の政策の特徴がよく表れている。
社会保障給付費は現政権下、10兆円もの抑制を強いられてきたが、参議院選挙後には、医療では「75歳以上の窓口負担の原則2割化」や、介護では「要介護1・2の生活援助サービスの保険外し」など全世代に及ぶ社会保障費削減と患者・利用者の負担増が具体化されようとしている。そのキーワードは、公的責任を排除し、自己責任ということも偶然ではない。
このような折りに、消費税を10%に増税というのは、低所得者からさらに所得を奪うもので到底許されない。
その点、5野党・会派が市民連合と合意した共通政策は、消費税増税中止・公平税制・大幅賃上げや福祉施策・平和憲法を守ることなどを掲げており、私たちの要求である「社会保障は国の責任で拡充すること。患者の窓口負担など国民の負担を増やさないこと」を実現する大きな支えとなるものである。
現政権の政策への審判の場として、会員各位の投票への参加と、賢明な判断を願う。

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