2019年10月26日

臨時国会-希望を語るなら社会保障は充実こそ

(愛知保険医新聞2019年10月25日号)

国会が久しぶりに開会した。折しも来年度予算編成を控える中、首相が所信表明でうたった「希望にあふれ、誇りある日本を創り上げ、次の世代へと引き渡していく」ことが文字通り求められるが、果たしてその針路はどうか。
現政権の社会保障政策の看板は「全世代型社会保障」で、「意欲ある高齢者の皆さんに70歳までの就業機会を確保する」と首相も言うが、基礎年金を3割削減するような年金では生活できず働かざるを得ない高齢者の現状を無視したもので、議場から「暮らせないからじゃないか」と野次が出るのも無理はない。
政府の全世代型社会保障検討会議や財政制度等審議会などでは、後期高齢者医療や介護保険の自己負担2割化やケアプラン有料化など、患者・利用者の負担増が目白押しとなっている。『厚生労働白書(2017年版)』は、「高齢化の進展度合いから見ると、我が国の社会保障給付の水準は(OECD諸国でみれば)相対的に低い」と指摘したが、社会保障は給付の充実こそが必要であり、給付減や負担増など、もってのほかである。

関西電力の経営幹部が原発立地自治体の元助役から多額の金品を受領していた「原発マネー」還流疑惑も深刻だ。国民の支払った電気料金が原資であり、「○○屋、お主も悪よのう」という時代劇のシーンを地でゆく金品受け渡しには唖然とさせられた。この背景には、全国11の電力会社が再稼働に向けた工事を5兆円規模で発注していることがあり、国会での疑惑の徹底究明と、再稼働が適切なのかも含めエネルギー政策自体を考えるきっかけにすべきである。

首相の所信表明は憲法問題ではさらに重大さを増している。「新しい令和の時代にふさわしい」改憲への執念をあらわにし、「日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会だ。しっかり議論し、国民への責任を果たそう」と訴えたが、日本国憲法で憲法尊重擁護義務を課された首相が改憲論議の旗を振り、三権分立を侵す異常なものといえる。しかし、今国会は、7月の参院選で改憲勢力の議席が3分の2を割り込み、自民党が単独過半数を失った下で行われていることを念頭に置くべきである。参院選で国民が下したのは、「期限ありきの性急な改憲の動きには賛成できない」という審判であり、民意を無視した暴走は許されない。

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