2023年10月27日

臨時国会 弱者置き去りの政治を改めるべき

(愛知保険医新聞10月25日号)

発足2年を経過した岸田政権への支持率は、政権維持の危険水域とされる26%と現政権下で過去最低を記録(時事通信、10月調査)した。
国民が現政権を支持しないのはなぜか。それは、医療機関窓口での負担割合表示誤りなどのトラブルが絶えないマイナ保険証推進と現行保険証の廃止方針を改めようとしないなど、国民を顧みない政治への不信と、物価高騰に対する賃上げの対応などの経済対策が期待できないと思われていることが挙げられるだろう。
政府・与党は、臨時国会で国民生活支援の経済対策や、野党が提出する保険証廃止方針撤回の法案に向き合い、成立させるべきだ。
国民生活の困難さは直近の指標にも表れている。厚労省の所得格差に関する2021年調査結果(ジニ係数)は、過去最悪並みの水準となった。コロナ禍で全国民に10万円の特別定額給付金を交付しても生活の困難さは変わらず、年収200万円以下のワーキングプア層が17年連続で1,000万人を超えているなど、構造的な低所得層の存在が、日本社会の影を広げている。
政府は、このように弱者が置き去りにされるような政治を改めるべきだが、来年度予算編成にその姿勢はない。
各省庁の概算要求基準では、社会保障費の自然増抑制を継続しつつ、防衛力整備計画対象経費は別枠化して防衛費7.7兆円という大幅増の仕組みを導入。2024年は診療報酬・介護報酬の同時改定で「近年の物価高騰・賃金上昇等を踏まえて」対応といいながら、全体としての予算抑制路線があるために、プラス改定は見通せない状況にある。それどころか、介護保険の2割負担対象拡大や老健施設の多床室有料化などは、2024年度実施に向け、2023年末までの結論が狙われている。一方でマイナ保険証普及は推進し、医療・介護のデジタル改革は4倍近い予算増と推進姿勢が明白だ。さらに、「異次元の少子化対策」の安定財源確保のために医療や介護分野の「徹底した歳出改革」も求めている(10月2日、全世代型社会保障構築会議)。これでは、医療・介護など社会保障予算は一層削減され、診療報酬改定の財源もますます見込めなくなる。
協会が取り組んでいる「診療報酬大幅引き上げを求める医師・歯科医師要請署名」に寄せられた「せめて物価上昇分に対応し、賃上げを保障する診療報酬引き上げを」という切実な声に応える予算編成を国に迫りたい。

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