2023年11月17日

保険でより良い歯科 保団連の歯科医療改革提言の実現を

(愛知保険医新聞2023年11月15日号)

歯科医療界の低迷が言われて久しい。ここへ来て物価高騰・人件費上昇で、歯科医院の経営が苦しくなっている。とりわけ開業間もない若手の先生方から「先行きが見通せない」と悲鳴の声が上がっている。また医療DXの下で進められるオンライン請求義務化・マイナ保険証への対応の困難から、高齢の歯科医が閉院するという動きも広がっている。歯科医療のインフラが不足すれば国民のために良質な歯科医療を提供することができなくなる。
現在の歯科医療は、子どもの虫歯予防だけでなく口腔の機能や形態の健全な発達、歯周病予防を通じて成人の糖尿病など生活習慣病の予防、高齢者の食べる機能の回復から口腔機能低下症に対するリハビリまで、それぞれの年代に合った口腔管理を押し進める重要な立ち位置を占めている。
しかし、国民医療の一端を担う歯科は、診療報酬が長年にわたり強く抑制されてきた上、国による施設基準などの押しつけで不合理な制約を強いられる中での診療を余儀なくされている。さらに令和を迎え、歯科技工士学校の閉鎖・廃校が進み、若い歯科技工士の数も減っている。また、私学を中心に歯学部の定員充足率も悪化し、歯科医師が不足になるという予測まで出てきた。事実、この五年間、個人立歯科開業医は減少し、その影響で地方の無歯科医地区の数は上昇に転じた。このままでは国民皆保険における歯科医療は崩壊を迎えることとなる。
その原因は長年にわたる歯科の低診療報酬にある。今まで一部に混合診療容認と引き換えに低報酬を甘んじて受け入れる向きもあった。しかし良い治療が自費でしか受けられないとしたら毎月保険料を支払っている国民は堪ったものではない。この解決には基本診療料、基礎的技術料を引き上げる一方、窓口負担を下げ、保険適用の範囲を広げることだ。今、国民の期待に応えられる歯科医療改革をすべき時が来ている。その実現には、国の歯科医療費の総枠拡大が絶対に必要である。
全国保険医団体連合会(保団連)が今年10月に発行した「歯科医療改革提言・第三版」では、以上の内容をデータなどを基に解説している。医科歯科問わず、多くの会員にぜひ目を通していただきたい。また、11月23日には、提言を解説する歯科政策講演会をWeb併用で開催する。歯科医療の未来に希望の光を灯すため、多くのご参加を期待したい。

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