2023年10月17日

医師・歯科医師署名 診療報酬の引き上げと患者負担の軽減を

(愛知保険医新聞10月15日号)

愛知県保険医協会は、9月から2024年改定で診療報酬大幅引き上げを求める「医師・歯科医師署名」に取り組んでいる。
長年の低医療費政策の下で診療報酬のマイナス改定が繰り返され、疲弊していた医療現場は、コロナ禍に直面し、より厳しい状況に置かれている。加えて、物価が上昇し続けており、感染対策等による経費増、医療材料をはじめとする物品コストの上昇がその状況に追い討ちを掛けている。また、この状況では、医療機関で物価高騰に見合った賃金の引き上げは到底不可能で、医療現場の人手不足、労働環境の悪化に拍車をかけている。医療機関では、医療の質を守る必死の努力が行われているが、それは医療従事者の犠牲のうえに成り立っており、限界がある。
診療報酬は、国として保険医療の質を規定するものである。現在の状況で診療報酬の大幅な引き上げを行わなければ、医療の質を保つことは困難だと言わざるを得ない。診療報酬の引き上げを医療従事者の待遇改善としてのみとらえる意見も見られる。しかし、国民が受けることのできる医療の質を維持し、さらに良くするためにこそ大幅な引き上げが必要で、私たち医療関係者はその点を強く訴えていくことが大切だろう。
あわせて、現在の医療保険制度は定率負担を導入しているため、診療報酬が上がると、患者の負担が増すという問題がある。
新型コロナの流行当初、重篤な病気の発見の遅れや医療機関で服薬などを管理できないことによる慢性疾患の悪化など、医療機関への受診抑制による健康悪化が多く報告された。これは、医療機関にかかりやすいことが、国民の健康の維持・増進に重要な役割を示すものとなった。
9月29日に開催された社会保障審議会医療保険部会に厚労省保険局が提出した資料では、昨年10月に後期高齢者に2割負担を導入した結果、1割負担のままだった人に比べて2割負担となった人に受診抑制があったことが示されている。コロナ禍や物価高騰の影響で、国民生活が困難な状況である今こそ、医療費窓口負担の軽減をすることが求められている。
「診療報酬大幅引き上げを求める医師・歯科医師署名」では、診療報酬の大幅な引き上げと患者窓口負担の軽減の2項目を要望している。2024年改定に向けてこの2つを同時に要望することが何より求められており、多くの医師・歯科医師の協力をお願いしたい。


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