2024年3月16日

マイナ保険証 弱者置き去りにする保険証廃止は撤回を

(愛知県保険医新聞2024年3月15日号)

政府は昨年末に、今年12月2日で現行の健康保険証の新規発行を原則中止することを決定した。
河野太郎デジタル大臣は、会見で国民の不安を払拭するための措置を取ったので現行の保険証を廃止すると強弁した。しかし、国民の不安が払拭されていないことは各紙の世論調査からも明らかである。昨年末に毎日新聞が行った世論調査で今年12月の健康保険証廃止に「反対」との回答が6割近くにのぼっている。
世論を反映して、マイナ保険証の利用率も低迷を続けている。厚労省の最新の発表で、利用率は4.60%で、マイナ保険証を取得している人であっても利用しない人が圧倒的に多い状況となっている。さらに2月に発表された国家公務員のマイナ保険証利用率は4.36%で、利用率引き上げに省をあげて取り組んでいる厚労省でさえ4.88%という実態だ。このことは制度そのものにいかに無理があるかということを如実に表している。
2月15日に開催された「健康保険証を残そう! 国会内集会」では、障害者団体の代表者から「誰一人取り残さない医療DXというなら、重い障害を持っている人ほど支援が必要なはずだが、その点は何も決まっていない。誰のためのDXなのか」という訴えがあった。
この発言にもあるように、政府が期限を区切ってあまりにも性急に保険証廃止を決めてしまったために、その歪みが社会的に弱い立場にある人々に集中している。障害を持つ人だけでなく、高齢者施設の関係者、小さな子どもを持つ親などから「マイナ保険証が利用できない」という声が多数出ていることは見過ごせない。利用ができないだけでなく、取得すらできないとの声もあり、事態は深刻だ。
保険医協会は医療のデジタル化について、反対する立場ではない。しかし、あまりにも性急に保険証を廃止することで、医療にアクセスする国民の権利を阻害することは許すことができない。
本来、マイナンバーカードが国民にとって真に便利なものであれば、このように強引な手法を用いなくても普及するはずである。制度の不充分さを棚にあげて、国民に負担を押しつけることは許されない。
保険医協会・保団連では、「現行の健康保険証を残してください」署名に引き続き取り組んでいる。また、3月からは、マイナ保険証問題でのクイズハガキにも取り組んでおり、多くの会員に協力をいただきたい。

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