(愛知保険医新聞、2023年12月15日号「主張」)
コロナ禍や物価高騰の困難の中、医師・歯科医師は、国民の生命と健康を守るため日々奮闘している。協会は医師・歯科医師の願いに応えるべく、今年も社会保障を守る取り組みを旺盛に進めた。
オンライン資格確認導入義務化を国が強引に推し進めた結果、多大な負担が医療現場にもたらされた。協会はオン資確認トラブル実態調査を行い、記者会見やテレビ取材を通じてこの問題を広く社会に発信した。政府が5月の国会で来秋の健康保険証廃止の方針を強引に決めたことにたいし、「健康保険証を残して」の運動を現在にわたり展開してきた。協会で集約した国会への請願署名は4万6千筆を超えている。マイナ保険証のトラブル発生時は、健康保険証があれば対応できるが、廃止されてしまったら大混乱は避けられない。国民の医療情報の利活用を通じて医療費を抑制するという、医療DXの真の目的があるため、政府は簡単には引き下がらないだろうが、政府を追い詰めて「健康保険証を残す」という政治判断をさせるまで、運動を強めることが大切である。
「診療報酬大幅引き上げを求める医師・歯科医師署名」に取り組んだ。財務省の財政審は、診療所の経営が良好だとしてマイナス改定を求めているが、10年以上マイナス改定が続いた上、コロナ禍において身を削って対応した結果、医療現場は疲弊しきっており、人手不足も深刻だ。医療機関は、人々が安心して暮らせるようにするために必要不可欠な、公共性の高いインフラである。これ以上のマイナス改定は、日本の医療の基盤を根底から崩すような危機をもたらしかねない。マイナス改定など言語道断であり、大幅な引き上げを強く求めるものである。
コロナ禍と物価高騰などから会員の診療と経営を守るため、医療機関が活用できる助成・支援制度を「税経通信」にまとめ、会員に周知し申請漏れをなくす取り組みを行った。物価高騰にたいする医療機関支援策に関するアンケートを実施し、その結果を踏まえ県に要望書を提出した。
岸田政権は、社会保障のさらなる削減と大幅な軍備拡大の路線を突き進んでいる。社会保障の充実と軍備拡大が両立しないことは今も昔も変わらない。どちらが国民を幸せにする道なのかは、議論の余地なく明らかである。
国民も医師・歯科医師もともに喜べる、医療と社会の改善を来年もめざしたい。