(愛知保険医新聞2022年8月25日号)
中医協で2023年4月からのオンライン資格確認システムの導入「義務化」が答申された8月10日、厚労省は「ポータルサイトへのアカウント登録」の案内文書をアカウント未登録医療機関に書留で送付した。保険医協会には会員から「登録しないといけないのか」「数年後に閉院を検討しているので導入できない」「負担が増えるばかりで必要性を感じない」「コロナ対応でそれどころではない」など問い合わせが続いている。
答申はその方針を示しただけで、まだ「義務化」はされていない。協会は導入「義務化」撤回を求めるとともに、システム導入については慎重な対応を呼びかける。
厚労省は導入を加速させるために補助金の見直しを提案した。今年12月までに顔認証付きカードリーダーの申込みと、2023年2月末までにシステム事業者との契約を結んだ医療機関を対象に、診療所については42万9千円を上限に実費補助する内容だ。しかし、2023年3月末までの導入完了期限は、従前通り変わらない。
紙レセプト請求以外の医療機関に「義務化」がされれば、医科診療所の96・5%、歯科診療所の91・4%、病院の99・5%が「義務化」の対象となる。七月末現在、運用開始施設は26・1%に過ぎない。世界規模の半導体等の不足により機器の調達も不透明な状況。システム事業者は2023年3月までの導入に対応できるのか懸念される。このような中で半年足らずの間で導入を目指すのは無謀と言わざるを得ない。
そもそもオンライン資格確認を行うにはオンライン請求の回線の整備が必要となる。電子媒体で請求する医療機関(医科診療所23・7%、歯科診療所66・8%)は回線整備やレセコンの買い替え等のためにさらに負担が増える。現在の保険証の目視確認で特段大きな支障はないにも関わらず、「義務化」でランニングコストやセキュリティ対策など負担とリスクを一方的に医療機関に押しつけることになる。
「義務化」を強行することで医療現場の混乱が増すことは必至だ。中医協の答申書附帯意見には「令和4年末頃の導入の状況について点検を行い、地域医療に支障を生じる等、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限も含め、検討を行うこと」が盛り込まれている。政府・厚労省はこれまで導入が進まなかった医療機関の実情に目を向けるべきだ。「義務化」に反対する。