2022年11月17日

全世代型社会保障-世代間対立をあおるな

9月29日の社会保障審議会医療保険部会では、年末の取りまとめにむけた負担増・給付削減の議論が開始された。2021年末の「新経済・財政再生計画改革工程表」で掲げられた「薬剤費の患者負担引き上げ」「高齢者の金融資産を把握し負担増に反映」「窓口三割負担の『現役並み』所得者の対象拡大」などを柱に、12月にも負担増計画をとりまとめるとしている。
同月の「全世代型社会保障構築会議」では、「子ども・子育て支援の充実」として、出産育児一時金の増額や各種子育て支援策の拡充が示された。しかし、その際「負担能力に応じて、全ての世代で、増加する医療費を公平に支え合う仕組みを構築するための改革を実現することが必要」と、医療分野では後期高齢者の保険料引き上げや高齢者医療制度への支援金見直し、被用者保険者間の格差是正、医療費の伸びの適正化、給付の効率化が明記された。さらに、医療提供体制では、病院の再編・統廃合を内容とする地域医療構想の推進、働き方改革としてタスク・シフト/シェアなどが記された。介護保険でも、利用者負担・多床室の室料負担・ケアプランの有料化・要介護1、2(軽度者)の保険給付外しなどの負担増などが挙げられ、これらを前述の子ども・子育て支援策の財源にする議論となっている。
財務省の諮問機関・財政制度等審議会でも、5月の建議で、「年齢に関わらない公平な給付率(患者負担割合)を目指す」ことも明記され、0~6歳の8割給付、70歳以上の8割・9割給付を問題視して全年齢7割給付化を示唆している。
政府・財界は、社会保障給付が高齢者に偏っているように描き、現役世代との対立を煽って、更なる社会保障改悪を推し進めようとしている。
しかし、75歳以上2割化の際も、現役世代の保険料(支援金)はわずか月額約30円の軽減に過ぎなかった。世帯主が75~79歳(無職)の夫婦世帯は、平均で月収入23万円に対し、月支出25万円で月2万円の赤字である。高齢世帯では、貯蓄無しも多数存在するなど、貯蓄を切り崩し、働き、消費を切り詰めているのが実態であり、負担増を受け入れる余裕などない。高齢者にこれ以上の医療・介護の負担増は許されない。
財源を求めるのは、保団連が掲げる①法人税強化、②所得に応じた課税、③非正規雇用から正規雇用への転換と賃上げで保険料や税収の増――に尽きるのではないか。

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