オンライン資格確認(以下「オン資」)義務化をめぐり、中医協は昨年12月23日に経過措置と療養担当規則の改正案を答申した。
経過措置の対象は、①システム整備中、②接続可能なネットワーク環境が整備されていない、③訪問診療のみ、④改築工事中・臨時施設、⑤廃止・休止計画を定めている、⑥その他特に困難な事情――のいずれかを満たす医療機関で、今年3月31日までに届出が必要とされた。
①の、システム整備が遅れている医療機関への猶予期限は、今年9月末まで延長された。しかし、昨年末時点でシステム運用開始医療機関は医科診療所で27%、歯科で30%に過ぎない。ベンダーは半導体や人材が不足しており、わずか半年の延長でシステム整備が完了する保障は何もない。システム導入済みの医療機関では4割でトラブルが発生しており、義務化実施は大幅に延期すべきである。
②の、ネットワーク環境事情では、光回線の環境がない場合は対象になるとされた。
⑤の、廃止・休止予定の時期は、「遅くとも令和6年秋まで」と限定されている。数年後に閉院を考えている医療機関は対象外となるため、この取り扱いによって閉院が相次ぐようになれば、地域医療崩壊が懸念される。時期の限定をすべきではない。
⑥の、「その他特に困難な事情」の目安は、医師が高齢で月平均レセ件数が50件以下である場合とし、厚労省は「70歳以上であれば高齢と判断する。65歳から69歳は医療機関等の状況等を踏まえて個別に判断する」としている。これでは極めて限定的な対応であり、年齢とレセ件数は別要件とすべきである。
カードリーダー申込み医療機関は95%を超えているが、多くは「義務化なので仕方なく」「補助金の申請に間に合わせるため」など、消極的な理由での申込みが実情だろう。
今回の経過措置でも、全体としてオン資導入を進める姿勢は変えていない。オン資をめぐる環境では、システムトラブルや不具合なども多発している。医療機関を狙ったサイバー攻撃の脅威もあり、義務化を進めるのであれば、このような医療現場の不安の解消は欠かせない。
厚労省は、「オン資導入困難で医療機関の閉院を起こしてはならない」「個別医療機関が抱える困難な事情を踏まえて対応したい」と述べた(1月20日、保団連の厚労省要請)。
保険医協会・保団連は、拙速なオン資義務化の撤回と経過措置の抜本改善を求めるとともに、会員への情報発信や相談活動に力を入れ、一人の閉院・廃業も出さないために全力を挙げる。
2023年2月17日