2024年4月6日

介護報酬改定 国庫負担の拡大で利用できる介護保険に

(愛知保険医新聞2024年4月5日号)

今次介護報酬改定について、1月22日の社会保障審議会介護給付費分科会で諮問どおり承認され、改定率はプラス1.59%の微増となった。今次改定では、介護職員の処遇改善が最大のテーマであったが、この間の物価高騰をみても、この処遇改善が全く見合っていないことは明らかだ。
さらに厚労省は、訪問介護の平均収益率は7.8%の黒字であると主張して、訪問介護の基本サービス費を引き下げた。訪問介護事業所はヘルパーの人手不足や高齢化が深刻なうえ、物価高騰が直撃し、昨年の倒産件数は過去最多の67件(東京商工リサーチ調査)にのぼっている。この訪問介護の引き下げには、介護給付費分科会の委員も反発。日本医師会の委員からは「訪問介護がなくなると在宅医療は容易に破綻する」との懸念が示されている。そもそも厚労省が主張した「黒字」は平均値であり、中央値では4.2%と大きな乖離がある。調査結果についても、調査に小規模事業所は応じる余裕すら無く、大規模事業所の経営が反映されているとの指摘がある。その後、厚労省は野党からの要求を受けて、訪問介護事業所の利益率の分布状況を新たに集計したところ、赤字を意味する「利益率ゼロ%未満」の事業所が全体の36.7%を占めていることが判明している。このような状況で基本報酬を引き下げれば、事業の維持・管理に回せる収入は減少し、休廃止する小規模事業所が増加することになる。そうなれば一番困るのは利用者であり、介護を受けられなければ健康状態も悪化する。これまで国は「入院から在宅へ」の方針のもと、診療報酬・介護報酬の改定を進めてきたが、それとも矛盾する改定となっている。
この他にも今次改定では、ケアマネジャーの取扱件数の上限引き上げ、ICTの導入が進む特定施設に対する介護職員の配置基準緩和、原則貸与の歩行器や杖などの福祉用具に購入との選択制を導入、一部老健施設などの相部屋代を全額自己負担(8月から)など、介護職員の業務負担増と、利用者へのサービス低下と負担増が示されている。
そもそも、現在の介護職員不足や、介護保険があっても利用できないという状況を招いたのは、介護報酬を引き上げてこなかったことが元凶だ。介護職員の処遇改善、物価高騰への対応、感染対策など利用者へのサービス向上のためには、大幅な介護報酬の引き上げが必要だ。
一方で、介護保険は保険財源に対する国庫負担や企業負担が少ないため、報酬引き上げが保険料に与える影響は大きい。すでに県内市町村・広域連合で次期介護保険料の検討が進められているが、保険料引き上げが多く示されている。県内で最も高い名古屋市は、4.6%増の6,950円(標準額月額)となる予定だ。保険料負担を軽減しつつ、介護報酬引き上げと利用者負担の軽減を図るためにも、国庫負担の拡充を国に求めたい。

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