(愛知県保険医新聞12月15日号掲載)
この一年の社会情勢および当協会と保団連の活動を振り返る。
元日に能登半島地震が発生した。被害が甚大な上、地理的なアクセス不良と過疎・高齢化の困難が重なっている。9月には豪雨災害にも見舞われた。被災者の「住み続ける権利」を尊重し、生活、生業、医療・社会保障の復興を進める必要がある。被災者が住み続けられることで、医療機関も存続でき、地域として成り立つ。被災者の医療費一部負担金及び保険料の免除は、引き続き求めたい。南海トラフ地震発生の時期も迫っている。自然災害による被害をいかに小さくし、被災者の立場に立った復旧・復興をいかに進めるのかは、日本社会の最重要テーマの一つである。
今年は健康保険証の存続を求める取り組みに力を入れた。請願署名の紹介議員は与野党合わせて過去最多の14人となった。8月にオン資確認トラブル事例調査と、子育て世代を対象にしたマイナ保険証WEBアンケートを実施し、記者会見やマスコミの取材協力を行った。これらの取り組みを通じて、患者と医療機関双方にとって、受療権を保障する健康保険証がいかに重要であるかが明らかとなった。弱者への配慮に欠けた強引な医療DX推進は問題が多い。残念ながら健康保険証の新規発行停止を迎えたが、マイナ保険証を使わない自由はある。ぜひ「資格確認書」を入手し、活用することをおすすめしたい。
今年の診療報酬改定は、物価高騰や人手不足に苦しむ医療機関にたいし、さらに追い打ちをかけるような改定であった。医科・歯科問わず多くの医療機関が減収となり、経営の維持に苦慮している。また、長期収載品の選定療養導入で患者負担増となった。保険が使える範囲を徐々に狭くするやり方で、大きな問題だ。医療機関が経営面に多くの精力を割かなければならない状況は、医療者だけでなく患者・国民にとっても望ましくない。医師・歯科医師が安心して診療に力を注ぎ、従業員に相応な賃金を払い、経営も安定するような診療報酬に改善させる必要がある。
新たに石破政権が発足した。国会論戦もほとんど行わず党利党略で総選挙に踏み切ったが、与党は過半数割れに追い込まれた。これは、生活難に苦しむ多くの国民の自民党政治への怒りを示したものである。来年こそは、国民も医療者も喜べる医療の改善ができるような、政治の転換を実現させたい。