(愛知保険医新聞11月25日号掲載)
今、オンライン資格確認、オンライン請求の義務化で、対応できない歯科医療機関の廃院・閉院が増えている。事実、全国の歯科医療機関数は減少に転じている。50代以上の歯科開業医が多くいる中、電子カルテ化を強行される5年後には、多数の歯科医療機関が街から姿を消していくだろう。国民皆保険における歯科医療のインフラが失われていくのだ。
この6月に実施された診療報酬改定では、施設基準の人員や実績要件が強化され、歯科医療機関の二極化が進む。口管強で算定が複雑化してカルテ入力にも手を焼くが、さらに口管強の届出が行えないと、自費診療を広げない限り医院継続は困難になる。我が国の医療基盤を突き崩すこんな改定は許してはならない。
一方、患者・国民にとってはどうであろうか? マイナ保険証は、10月の利用率が15.67%にとどまっている。このこと自体が政府への不信感の表れであるが、実際問題として現場ではトラブルが続く。一番の問題は現行の保険証が無いと、そのトラブルをリカバリーできない点である。国民皆保険制度として誰もが安心して受診できる為に、現行の保険証を残すことが大事だ。
またベースアップ評価料は、特定の医療従事者の賃金を、患者に一部直接負担することを強いている。受診先によって一部負担金に差が生じ、患者にとっては医療機関への不信感を募らせることになりかねない。
さらに政府は、高齢者の窓口負担割合2割の標準化を目論み、健康保険料の引上げも行おうとしている。
つまり歯科医療機関も患者・国民も置き去りにした診療報酬体系、医療保険制度に組み換えられようとしているのだ。このまま「置き去りの歯科医療」を甘受するのか、「患者・国民・歯科医療従事者がともに喜び合える歯科医療」へ転換させるのかが今―問われている。より良い歯科医療に転換させるには、「財源が無い」ことを理由に国民を切り捨てる医療費抑制政策を打ち破るしかない。国民皆保険を守るため、歯科医療費の総枠拡大を勝ち取ろう。
この大きな力になるのが現在取り組んでいる「保険でより良い歯科医療を求める請願署名」である。協会会員の力を結集して取り組もう。医科会員も、ぜひ理解と協力をいただきたい。