(愛知保険医新聞2024年4月15日号)
2024年6月の診療報酬改定は、3月の告示と通知の発出により、改定の具体的内容が示されているが、医療機関からはマイナス改定に対する不満や、複雑で理解が難しい改定内容に対して困惑する声が多数寄せられている。このような改定となったのは、社会保障費の自然増圧縮と医療費抑制策を進める政府の下で、全体でマイナス0.12%と6回連続のマイナス改定とされたことに根本的な問題がある。
医療機関は、この数年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け続けるとともに、物価高騰と賃上げによる人材確保の対応など、厳しい経営を強いられてきた。また診療報酬の不合理是正や、医療従事者の労働環境の改善と医療の質を向上させていくためには、診療報酬を大幅に引き上げることが必要であったにもかかわらず、薬価等の引き下げ分を本体改定部分に充当されることもなく、十分な改定財源が確保されなかった。
改定の財源が十分でない中で、政府が推進する医療DXや後発医薬品の使用に関連する点数は、新設や引き上げが行われている。また、医療従事者の賃上げのためにベースアップ評価料が設けられたが、対象職員が限定され、医療機関での計算や管理なども細かく規定されるなど、その取扱いは複雑で難しい。すべての医療機関の経営を底上げする初再診料や入院基本料の大幅引き上げを行わず、このような点数を設けて賃上げを迫るやり方には納得ができない。
また、これらの財源を確保する一方で、特定疾患療養管理料から糖尿病等の三疾患を除外し生活習慣病管理料を再編する等で、0.25%の引き下げが行われている。保団連の試算では内科系診療所で年間223万円もの減収となることが報告されており、医療従事者の賃上げどころか、さらに医療機関の経営を圧迫するものであり、けっして容認することはできない。さらに、医師の診療を軽視するリフィル処方や長期処方の推進、長期収載医薬品の選定療養化による患者負担増などに加え、新型コロナの特例点数の3月末での廃止など、患者・国民への安心・安全な医療の提供に逆行する内容も含まれている。
協会では、医療機関からの声を集めて、診療報酬の大幅引き上げと不合理是正の運動を強める。診療報酬改定に対する率直な意見をぜひお寄せいただきたい。