2024年10月26日

憲法改正問題-政府に戦争させなかった九条の堅持・活用こそ

(愛知保険医新聞2024年10月25日号)

10月11日、ノルウェーのノーベル賞委員会が「核兵器のない世界の実現に向けた努力」を評価し、日本原水爆被害者団体協議会にノーベル平和賞の授与を発表した。日本政府は唯一の戦争被爆国にありながら、核兵器禁止条約批准にも背を向けている。世界が日本に期待するものは何かを示す出来事と受けとめた。
第102代内閣総理大臣に石破茂氏が就任した。石破氏は防衛庁長官や防衛大臣を歴任し、安全保障政策では「改憲など持論のタカ派色の強い政策を推進する構え」(中日新聞・9月28日)だと報道されている。
外交力と防衛力の両輪をバランスよく強化すると言っているが、石破首相の外交・安全保障観は軍事同盟(日米同盟)が基軸である。それは北大西洋条約機構(NATO)をモデルにした「アジア版NATO」創設の提唱からも見て取れる。この「アジア版NATO」は日米間にとどまらない集団的自衛権行使が前提になる。日米地位協定の「見直し」も口にしているが、中身は日本の主権を主張する見直しではなく、米国に自衛隊基地を設けるというものだ。
核に関する発言も見過ごせない。非核三原則のうちの「持ち込ませず」を変更し、米国の核兵器を日本で運用する「核共有」にも言及していた。
安倍政権以降「専守防衛」からの逸脱が続いているが、石破首相の主張は、どれもその逸脱をさらに大きく踏み出すことを意味している。
そして憲法に関しても「私が総理に在任している間に発議を実現」したいと述べている。所信表明演説では触れなかったが、総裁選では憲法九条への自衛隊明記など自民党がとりまとめた改憲4項目の実現に加え戦力の不保持を定めた憲法九条二項の削除が重要と訴えており、改憲の狙いは日本を「平和国家」から「戦争する国」に変貌させることである。
今、国民の望みは何か。石破内閣発足後の世論調査(共同通信社10月1日・2日実施)を見ると、「優先して取り組む課題」で一番希望が高かったのは、「景気・雇用・物価高対策55.9%」、「年金や社会保障29.4%」となる。「外交・安全保障」も20.9%だが国民の願いは〝戦争しない〟ことにある。しかし石破首相の主張は、安全保障のジレンマ(軍備増強や同盟の強化などが、他国にとって相対的な脅威を高める結果となり、類似の行動を促し、結果的に緊張関係が高まってしまうというジレンマ)により、却って戦争の危機を招く結果をもたらす。世論調査で「憲法改正4.4%」であり、国民は憲法改正を望んでいない。
防衛費が10年連続で過去最大を更新するなか、社会保障費は自然増分さえも削減が続いている。「戦争する国づくり」は医療・福祉など社会保障を圧迫し、国民の生活苦に直結する。戦後79年、政府に戦争を放棄させ、戦争をさせてこなかった憲法九条を堅持・活用することが今求められている。

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