(愛知保険医新聞2024年10月15日号)
10月1日、臨時国会の衆参両本会議での首班指名選挙で石破政権が誕生した。自民党総裁選期間中、石破氏は野党と国会論戦を行った上で解散時期を検討するとした慎重姿勢を示していたが、舌の根も乾かぬうちに前言を翻し、10月9日衆議院を解散、10月27日総選挙が行われることとなった。
総裁選期間中、解散時期だけでなく「ゼロに近づけていく努力を最大限行う」とした原発や、金融所得課税についての発言を総裁就任後相次ぎ修正、国会論戦を行うこと無く党利党略による大義のない解散総選挙を行うことは断じて容認できない。
この間国内では新自由主義経済が推し進められ、格差が拡大し経済は低迷、相次ぐ物価高騰、社会保険料の上昇により国民生活は疲弊している。このような状況下でも政府は、財源の裏付け無しに2027年度に防衛費をGDP比2%にする方針を示す一方、「改革工程2023」に沿って社会保障・教育など、多くの分野の予算を圧縮、医療・介護の給付削減、患者・利用者の更なる負担増が議論されている。
医療分野では、今年の診療報酬が実質マイナス改定となり、保険医協会が行った会員アンケートには「物価高騰が続く中、生活習慣病管理料を含む診療報酬が下がり、人件費の補てんまで手が回らない」「医療DXと称して様々な出費を迫られ、閉院を考えている」など、多くの怒りの声が寄せられている。
またマイナ保険証を巡っては、現行の健康保険証が新規発行停止となる12月まで3カ月を切る中、八月時点の利用率が12.43%と低迷。トラブル事例も未だ後を絶たない。総裁選期間中、石破首相、林官房長官が「期限が来ても納得しない人がいっぱいいれば、併用も選択肢として当然」「不安を解消するために、見直しを含めて適切に対応していきたい」と発言。新政権発足後、発言を修正したが、そう言わざるを得ないほど国民・医療従事者の「現行の健康保険証を残してほしい」という思いは強い。政府にはこうした声に真摯に向き合い、現行の健康保険証を残すことを強く求めたい。
短い総選挙期間ではあるが、マイナ保険証・診療報酬・患者負担など、社会保障問題を争点に押し上げる必要がある。
国民の命と生活を守り社会保障を充実させるために、政治の転換を求め、会員各位には貴重な一票の投票を呼びかけたい。