(愛知保険医新聞2025年3月15日号掲載)
来年度税制改正法案が衆議院を通過した。今回の改正の目玉は「103万円の壁」に関することであろう。税制改正大綱では、給与所得者に対して所得税が課税されない給与収入額を103万円から123万円へ拡大する、課税最低限の引き上げが明記された。その後、与党と国民民主党、日本維新の会との協議を経て、基礎控除に年収850万円以下の所得制限を設け段階的に160万円まで引き上げる修正案が提出された。年収850万円超の基礎控除は、原案のとおり現行48万円から10万円引き上げる。
物価高騰で国民生活が疲弊しているなかで、課税最低限の引き上げは必要であるが、最低限の生活費には課税しないという原則から所得制限を設けることは問題であり、さらに複雑怪奇な税制がつくられる。一方でその恩恵が受けられない約1500万世帯の住民税非課税世帯のことを忘れてはいけない。
しかし、我々医療機関にとって一番関心のある控除対象外消費税に関しては触れられていない。控除対象外消費税とは、保険医療は社会政策的配慮から非課税取引とされているため、医薬品、材料、医療機器などを購入する際に支払っている消費税は、患者さんに消費税を上乗せすることができないことである。消費税分は医療機関の持ち出しになっていることが問題である。
国は、消費税分は上乗せして診療報酬が決められているので、控除対象外消費税は存在しないと言っている。2023年厚生労働省の医療機関等における消費税負担に関する分科会が発表した「控除対象外消費税の診療報酬による補てん状況の把握」では、医科全体、歯科においても補てん不足になっていないと結論づけた。しかし、このもととなっている各収益・費用項目の伸び率の計算方法の根拠が示されておらず、疑問が多い。実際、医薬品や材料などの費用は補てんされているのかもしれないが、大型の医療機器などの消費税の補てんは充分だとは思えない。
物価高騰は消費税にも反映され、国民にも医療機関にも重い負担になっている。逆進的で不公平税制である消費税の減税こそ求められる税制改正でないか。消費税減税により医療機関の控除対象外消費税の負担も軽減される。そして、この控除対象外消費税の解決の道は、保団連・保険医協会が主張する医療にはゼロ税率を適用させて、仕入れ分の消費税を還付してもらうことが根本の解決方法である。