2024年5月25日

どうする憲法-戦争する国への改憲は許してはならない

(愛知県保険医新聞2024年5月25日号)

岸田首相は今年の年頭会見で「憲法改正の実現に向けた最大限の取り組みも必要だ」「自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく」「今年は文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速していく」と改憲への強い思いを表明した。また、今通常国会では、4月に入ってから憲法審査会が開かれており、「緊急事態下での国会議員の任期延長」が焦点になっている。この緊急事態下での議員の任期延長には、重大な狙いが隠されている。
岸田内閣2022年12月、「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の、いわゆる安保関連3文書を閣議決定した。この文書の最大の問題点は、これまで掲げてきた「専守防衛」をかなぐり捨て、「反撃能力」という「敵基地攻撃能力」の保有を認めた。また、中国の主要都市を攻撃できる長距離ミサイルをアメリカから「爆買い」することを決め、沖縄を含む南西諸島への配備を進めている。ロシアのウクライナ侵略、台湾有事、北朝鮮のミサイル発射を口実に、国民の不安をあおり、世論の支持を得ようとしてきた。これらの明文ではない実質改憲で、戦争の放棄を謳った九条を持つ日本を戦争のできる国へと徐々に変貌させてきたのである。本来は、憲法九条そのものを明文改憲したいが、平和を望む国民世論により実現はできていない。そこで出てきたのが、この「緊急事態下での国会議員の任期延長」なのである。
憲法審査会で、維新や国民民主など一部野党は、「緊急事態条項の創設や、九条への自衛隊の明記などを軸に遅滞なく改正原案の合意形成を図るべきだ」「岸田総理が今年9月までに改憲したいならば、まずは緊急事態における議員任期の延長を中心とした改正だ」と述べている。こうした改憲勢力が、国会での発議に必要な3分の2を超えている現実を直視しなければならない。議員任期の延長は戦前に実施された翼賛選挙や、ナチスの独裁を確立させたという歴史的事実を忘れてはならない。緊急事態による議員任期の延長は、九条の明文改憲への第一歩なのである。
戦争をさせなかった戦後78年間に確信を持ち、憲法と国連憲章に基づき、武力でなく話し合いで紛争を解決するため徹底した平和外交の推進、そのためには九条を守る世論を強め、選挙で憲法擁護の立憲野党を大きくすることが今求められている。

 

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