2023年12月21日

先発医薬品と後発医薬品の差額を患者自己負担とする案に抗議し、撤回を求める

厚生労働省は、11月9日に開かれた社会保障審議会医療保険部会で、後発医薬品のある先発医薬品(長期収載医薬品)を使用した場合に、現在の窓口負担とは別に、後発医薬品との差額分を患者負担とする案を提示した。現行の選定療養制度を使えば法改正がなくても差額分を患者から徴収できるとしているが、実質医薬品の保険外しにつながる。これは国民皆保険制度の根幹にかかわる重大な問題である。
今、医療現場は医薬品供給不足が深刻である。愛知県保険医協会が実施した調査でも「11月現在で『処方できない』または『処方が困難』な医薬品がある」との回答が82.3%(中間集約)であり、咳止め薬や去痰薬を中心に日常診療で用いる医薬品が処方できない事態となっている。こうした事態に対して、他剤への変更や投与量・処方日数を減らすなどの対応を余儀なくされている。また、こうした状況についての患者さんへの説明や在庫確保や処方変更の依頼、代替薬の採用検討などにより、医療機関の業務が増えている。調査では、患者の病状悪化を招いているとの回答も一部にある。
このような事態は、厚生労働省が強行に後発医薬品使用を誘導した結果である。後発医薬品が不足し、長期収載品を使わざるを得ない現状もある中、後発医薬品の使用促進を強制し、患者負担増を求めるのは理不尽の極みである。厚生労働省は、必要な処方を判断する医師の裁量(処方権)を尊重し、長年にわたって安価で患者の治療に有効であった医薬品を安定的に供給するべきである。
また、今回の患者負担増を求める直接的な理由は「創薬力強化」とされている。経済界や保険者出身の委員は、患者負担増で捻出した財源を「イノベーション評価」、つまり新薬への高い薬価算定に充てるべきと主張している。負担増や受診抑制により生じた財源を患者の医療アクセスを悪化させる高い薬価の値付けに使うようなことは、医薬行政を歪ませるものであり、到底容認できない。新薬開発のために患者負担を財源とするのは、道理がない。
私たちは、後発医薬品のある先発医薬品を使用した場合に、薬価差額を患者に追加負担を導入する案の撤回を強く求める。

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