2023年7月6日

政府予算編成 診療報酬削減や医療・介護負担増は乱暴

政府は、6月16日「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」を閣議決定した。今後5年間に43兆円もの防衛費大幅増を明記した一方、「こども・子育て支援加速化プラン」では「子ども予算倍増」を打ち出したものの、具体策や財源は年末まで先送りした。
岸田首相は13日に「こども未来戦略方針」を閣議決定した後の記者会見でも、社会保障の「徹底した歳出改革」を明言している。
「骨太の方針」では、医療・社会保障について、医療・介護の患者・利用者負担増を盛り込んだ全世代型社会保障「改革の工程の具体化」を進めていくとしている。介護では、2割化の対象拡大や老健施設多床室の利用者負担増などが年末までに結論を得るとしている。
2024年度の診療報酬改定等について、「物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスを受けられるよう、必要な対応を行う」としており、診療報酬引き上げの明記はない。それどころか、患者負担増を招く「長期収載品等の自己負担の在り方の見直し、検討を進める」ことや、医師の受診を間引くことで疾患管理に懸念を増大させる「リフィル処方の活用を進める」と明記しており、看過できない。
診療報酬については、財務省の財政制度等審議会の建議(5月)でも、コロナ特例の廃止を求め、コロナ補助金などで蓄積された病院の純資産について「賃金・物価高への対応はこうした資産を活用すべき」と迫っている。さらに、リフィル処方についても医療費削減目標が未達成の場合「(来春の)診療報酬でその分を差し引く」よう求めるなど、極めて乱暴な議論が行われている。
また、「2024年秋に健康保険証を廃止する」と明記した上、健康・医療・介護情報を集積して利活用を進める「全国医療情報プラットフォーム」などの医療DXについて、「政府を挙げて確実に実現する」としたことは、重大である。現行の保険証廃止は、オンライン環境への対応が困難な医療機関を閉院に追いこむ上、様々なリスクを抱えるマイナンバーカード利用を押しつけるもので、国民の各種世論調査で軒並み「不安」が7割を超える実情を見るまでもなく、大問題である。
首相に「聞く力」があるなら、今こそ強引な政策進行は立ち止まるべきである。

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