2023年7月27日

原爆の日を前に-被爆者の声をきき今こそ核廃絶を

(愛知保険医新聞2023年7月25日号)

日本は世界で唯一の戦争被爆国であり、平和憲法を持つ国である。原爆の日を前に、国民の一人ひとりが核兵器の使用を禁止し、一刻も早く地球上から核兵器をなくすこと、平和を守り世界に届けること、被爆者援護を充実させることを心に誓うことを願う。
2023年5月19日から3日間、被爆地・広島でG7サミットが開催された。G7サミットで発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」には、「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」と明記され、核兵器の非人道性や核兵器禁止条約に一言も言及せず、いざとなれば核兵器を使用する「核抑止」を公然と擁護・正当化している。ロシアに対し「いかなる核兵器の使用も許されない」と非難する一方、G7参加国の核兵器について、「防衛目的」と正当化したことで、核兵器をめぐる分断と亀裂をより深めた。
このビジョンに対し、岸田首相の遠戚でもあるサーロー節子氏(13歳の時、爆心地から1.8キロで被爆)は「7人の各国首脳が広島まで来てこれしか書けないとは、胸がつぶれるようだ。死者に対する大きな罪だと思う」と痛烈に批判した。議長である岸田首相の責任は大きく、被爆地出身の総理の資格はない。サミット閉幕に伴い、岸田首相は平和記念公園の原爆碑の前で、核抑止論を展開し、核廃絶に真っ向から逆行する会見を行った。被爆者や原爆犠牲者を冒涜するものだ。一体何のために被爆地・広島でサミットを開催したのか。
2023年7月7日に核兵器禁止条約が採択から6年を迎えた。核兵器を包括的に法的禁止したこの国際条約は、7月20日現在、署名は912カ国、批准は68カ国となった。国民の世論調査でも7割が条約に批准すべきと回答しており、唯一の戦争被爆国の日本こそ条約に批准すべきである。
広島と長崎に原子爆弾が投下され、78年たった今日においても、多くの被爆者が放射能の影響に苦しんでいる。核兵器は最悪の非人道兵器であって、核兵器による惨禍を二度と繰り返してはならない。そのための唯一の方法は、核兵器を廃絶することである。被爆者の平均年齢は83歳を超えた。もう幾ばくの猶予もない。今こそ、被爆者の声をきく時である。

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