2023年6月30日

「GX脱炭素電源法案」可決に強く抗議する

 愛知県保険医協会公害環境対策部は、「『GX脱炭素電源法案』可決に強く抗議する」抗議文を、6月5日付で内閣総理大臣、経済産業大臣宛に送付しました。

 5月31日、GX脱炭素電源法案が参院本会議で自民・公明・維新・国民の各党の賛成多数で可決成立した。このGX脱炭素電源法案(5つの法案)はそれぞれが重要な法案で、日本の原発政策の大転換となるにも関わらず、束ね法案にし、まともに審議も尽くされないまま可決成立した。

 原発は40年稼働をめどに設計されており、老朽原発は中性子による原子炉圧力容器の金属劣化など安全性に懸念がある。さらに運転停止期間にも配管、電気ケーブル、ポンプなど原発の各施設・部品は劣化していく。交換できない部品も多く、電力会社の点検できる範囲も限定的であるため長期の運転は非常に危険である。安全第一を掲げるのであれば、あり得ない選択といえる。

 また、原発は脱炭素効果の高い電源ではなく、ウラン原料の採掘、精製、加工時などに二酸化炭素が排出され、船などによる輸送でも二酸化炭素が出る。さらに、原発は計画から稼働開始まで長い期間がかかり、2030年度の温室効果ガス46%削減目標にも全く間に合わない。政府のいう脱炭素を目指すなら、太陽光、小水力、地熱、風力、潮力など自然界に存在するエネルギーを利用する再生可能エネルギー普及こそが重要で、原発は廃止すべきだ。

 また、原発を新設すれば、さらに数十年にわたり、原発を動かして、解決不能な核のごみを長期にわたって出し続けることにもなる。これ以上、核のごみを増やすべきではない。

 原発は事故やトラブルが頻発する不安定な電源で、ひとたび事故やトラブルが生じれば、住民の健康と生活に取り返しのつかない影響を与えることは、東日本大震災での東京電力福島第一原発事故で、痛切に学んだ教訓である。その反省もない「原発回帰」は許されるものではない。

 これら5法案成立により、「原発の活用」が国の責務となり、その利用が永続化することになった。また所管が電気事業法に移ったため、原発運転は経産省が審査することになる。規制委員会は延長の可否は判断せず、劣化状況を審査するのみとなり、60年を超えての運転が可能となった。このままでは、規制当局が電気事業者のとりことなり、新たな「安全神話」をもたらしかねない。

 私たちは、いのちと健康を守る医師・歯科医師として、「GX脱炭素電源法案」の可決に強く抗議する。

                                           以 上

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