(愛知保険医新聞2023年2月25日号)
岸田政権は2月10日に75歳以上の4割にあたる年金収入153万円超の方の医療保険料を引き上げる法案を閣議決定した。医療保険料を2024年度から段階的に引き上げるもので、今国会での成立を目指している。
厚労省の試算をもとに法改定と高齢化に伴う保険料増の影響を見ると、現在に比べて年収200万円の人で年8,500円増(2025年度)、年収400万円の人では年25,600円増(2024・25年度)となる。
昨年10月から保団連が行っている患者アンケートでは、「過去半年以内に経済的理由で受診を控えたことがある」との回答が19%に及んでいる。物価の高騰や相次ぐ負担増などが受診動向に大きな影を落としている。このような中で新たな負担増を強行すれば高齢者の健康に多大な影響を与えることは明らかだ。
今回の改定は、出産育児一時金の一部を高齢者世代に負担させることや現役世代の負担軽減を理由にしている。保険料の増加を根本的に抑制するためには、保険料に占める国庫負担の割合を引き上げることこそが最も重要だ。しかし、今回の見直しは、そのことを脇に置いて、あたかも高齢者が医療保険財政を圧迫しているかのように描き、世代間の分断を煽るもので、その点でも許し難い内容となっている。
さらに、昨年末の社会保障審議会介護保険部会では、来年4月から介護保険の2割負担となる対象者を拡大すること、老健等への多床室室料負担の導入などについても実施する方向で今年夏までに結論を出すことが確認されている。
医療でも介護でも負担増となれば、特に医療・介護を必要とする高齢者世代への影響は計り知れない。「国民の命を守る」というのであれば、物価高や賃金が上がらないなかで国民の生活が大変な今こそ社会保障予算を大幅に増やすべきである。
政府が、介護保険制度の見直しの結論を今年夏までとしているは、春に行われる統一地方選挙への影響を考えてのことだと言われている。統一地方選挙に向けて社会保障の負担増計画を許さず、国に国庫負担等の拡充を求める運動を強めることが重要だ。
保団連・保険医協会では今国会中に医療・介護負担増に反対する署名にも取り組む予定である。多くの会員の協力をお願いしたい。