愛知県保険医協会は、敵基地攻撃能力保有の与党合意や防衛費大幅増の方針に関して、岸田首相と自由民主党、公明党あてに、12月16日付で抗議声明を発出しました。
「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は、11月22日、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が抑止力の維持・向上のために不可欠としたうえで、5年以内に防衛力を抜本的に強化しなければならないとする提言をまとめた。提言では、このような防衛力強化に必要な財政規模について「NATO加盟国が用いる尺度(GDP比2%)を参考」としたうえで、その財源について「幅広い税目による負担が必要である」と述べている。
これを受けて自民、公明両党の実務者協議が行われたが、12月2日、両党は敵基地攻撃能力の保有を認めることで合意したと報じられている。
敵基地攻撃能力の保有は、相手国に脅威を与える兵器は保有できないとしてきた歴代政府の専守防衛の方針を180度転換させるものであり、憲法にも国際法にも違反する先制攻撃に道を開くものである。
集団的自衛権行使を容認する安保法制の下では、「存立危機事態」として米国に対する攻撃着手があったとされた場合に、日本が相手国の基地等に対して「反撃」を行う可能性も排除されない。その場合の「攻撃目標」も「軍事基地」に限定されるわけではなく、相手国の政府機関等の指揮統制機能も含めて「事態に応じて判断する」とされている。何をもって相手国からの「攻撃着手」とするかも、その時々で「個別具体的に判断する」とされており、これでは、何らの歯止めもなく、事実上の先制攻撃を可能とし、日本を相手国との全面戦争の危険にさらすことになる。
また、このような防衛力強化に要する財源について岸田首相は、11月28日、防衛相及び財務相に対して、2027年度時点の防衛費を「GDP比2%」(約11兆円)とするよう指示したと報じられている。毎年、赤字国債が発行され続け、国債発行残高が1000兆円を超えるという国家財政の中で、今後5年間で40~43兆円もの「防衛費」を支出することになれば、増税やさらなる社会保障関係費の削減等によって国民生活が犠牲になることは火を見るより明らかである。
敵基地攻撃能力保有は、「軍事」対「軍事」の悪循環を作り出し、日本を米国と一体となっての全面戦争突入の危険にさらすものである。さらに、日本のこの間の専守防衛の方針によって醸成していた、他国を攻撃しないという「安心供与」の効果も失うことになる。
今、必要なのは、憲法九条を生かした平和外交により、関係各国と対話し緊張を緩和することであって、「戦争を起こさせない」よう最善・最大の外交努力を尽くすことである。
以上のことから、敵基地攻撃能力保有の与党合意、防衛費大幅増の首相指示に抗議する。