岸田政権として初めてとなる来年度予算概算要求が各省庁から示された。総額は110兆円規模というが、政策判断で増減させやすい裁量的経費については原則一割削減の方針の下、厚労省予算は、高齢化などに伴う社会保障費の伸び(自然増)を昨年度比1,000億円減の5,600億円に抑えている。
厚労省予算では、電子カルテの規格標準化や電子処方箋の運用推進などに九十六億円など、オンライン資格確認の義務化推進と軌を一にした項目も見られる一方、歯科分野で注目を集めた「生涯を通じた『国民皆歯科健診』導入」に向けた口腔ケア推進などにはわずか31億円と内容が乏しく、制度の拡充に該当する項目は見当たらない。
対照的なのは、防衛費の大幅増だ。「骨太の方針2022」で防衛力を五年以内に抜本的に強化することが明記されたことを受けた要求となった。防衛費の要求額5.6兆円は、9年連続で過去最大を更新。さらに金額を明示しない「事項要求」を100件超盛り込んでおり、年末に改定される国家安全保障戦略など三文書を踏まえ、来年度の予算編成では6兆円台半ばが視野に入るという。
防衛費の「事項要求」の対象には、違憲の敵基地攻撃能力につながる「スタンドオフ防衛能力」として、射程を現在の100数十キロから1,000キロ程度に延ばす地対艦誘導弾の量産化や、大気圏内を超音速で滑空、攻撃する高速滑空弾などが並ぶ。さらに、司令部の地下化や、被害を受けた滑走路を復旧する器材も盛り込んだ。アメリカの対中戦争に参戦し、日本が報復攻撃を受け、国土が戦場になることを想定したものであり、日本国土を戦争下に置く想定で憲法上も認められないものである。ほかにも、つけ払いである新規後年度負担扱いの項目も2.9兆円あり、総額はすでに世界有数の軍事大国となっている。
防衛費の増額を手当てする財源は何か。政府はその財源を示しておらず、消費税大幅引き上げなどの大増税か、予算費目上は最大の割合を占める社会保障費の削減しか選択肢はない。雑誌「女性自身」(6月16日号)では、防衛費5兆円を賄うには、「消費税増税なら2%引き上げ、医療費負担なら自己負担3割を6割に引き上げ、年金なら年12万円の引き下げ」との国民負担増リストを紹介している。
歪んだ予算編成を改め、いのち・くらしを守る施策の拡充を求める。
2022年9月17日