(愛知保険医新聞2022年6月25日号)
通常国会が閉会した。立憲民主党が提出した内閣不信任決議案は否決はされたが、道理は通っているといえる。すなわち、第一は物価高騰への政府の無策ぶりである。閣議決定した「骨太の方針2022」や「新しい資本主義実行計画」では、ウクライナ危機に伴う物価高で格差是正の必要性が増しているにも関わらず、物価高を進め、大企業の成長を重視するアベノミクス(3本の矢)を踏襲する方針を示した。「骨太の方針2022」では、首相が就任当初に意気込みを示した「金融所得課税」の見直し・強化は棚上げした上、国民には「投資」による「資産所得倍増」を打ち出し、「貯蓄から投資へのシフト」を進めるとしている。今春闘でのベースアップは1%に届かず、物価上昇にも追いついていない。資産所得の倍増は、株式や投資信託などを大量に保有する金融資産家に恩恵が集中するもので、大多数の国民は脇に放置されている。政府がやるべき対策は、賃上げであり、消費税減税などの個人消費を喚起する方策ではないか。野党4党(立・共・れ・社)が共同で消費税減税法案を提出し、個人所得課税の累進性強化、法人税・金融所得課税に関する措置なども盛り込んだことは、目線を国民に向けたものといえよう。
内閣不信任案の第二の道理は、ウクライナ危機に乗じ、「力対力」で対抗する防衛費大幅増の姿勢である。自民党は対GDP比2%以上を念頭に防衛費の大幅増額を政府に提言し、「骨太の方針2022」でも5年以内の相当な増額を明記している。2%以上とは5兆円規模の追加財源が必要となる。6月3日付の中日新聞は「防衛費5兆円 暮らしに向けたら何ができるか」として、5兆円あれば公的医療保険の自己負担をゼロにできることや小・中学校の給食無償化と大学無償化、さらに児童手当の拡充も3兆円台で実現可能と紹介している。防衛費を増やすために社会保障予算の削減か大幅増税に陥ることが目に見えており、まさに「大砲かバターか」の審判が目前の参議院選挙では必要であろう。
「骨太の方針2022」では、75歳以上の2割負担化に留まらず75歳以上の保険料引き上げや病床削減の地域医療構想推進などが掲げられ、さらなる負担増が計画されている。参議院選挙後、衆院の解散などがない限り3年間は国政選挙はない。社会保障の負担増を許すなという有権者の意思表示が極めて重要となっている。