有病者のリスク管理「循環器疾患の基礎知識」

「循環器疾患の基礎知識」

歯科学術委員会は、12月6日(水)にシリーズ研究会「有病者のリスク管理(2)」を名古屋第一赤十字病院救急部長・花木芳洋氏を講師に開催した。
 歯科学術委員の田辺芳孝氏の報告を以下に掲載する。

今回は、心筋梗塞や狭心症の基礎、アスピリンに的を絞っての御講演でした。主な講演内容と感想を掲載します。

〔狭心症の治療〕
 狭心症治療の目的は、1.胸痛などの自覚症状を抑え、QOLを改善することと、2.心筋梗塞に移行するのを予防して突然死を防ぎ、長期予後を改善することです。
 治療は1.薬物療法、2.カテーテル療法(ステントを留置することもあります)、3.手術療法(バイパスを作ります)があります。治療の基本は薬物療法です。
 アメリカでは、狭心症治療の薬と生活習慣の注意をA~Eで示しています。A:Aspirin(アスピリン)・Antianginal therapy(抗狭心症薬)、B:Beta blocker(ベータ遮断薬)・Blood pressure(血圧)、C:Cholesterol(コレステロール)・Cigarettes(たばこ)、D:Diet(食事療法)・Diabetes(糖尿病)、E:Education(患者教育)・Exercise(運動)。

〔薬物療法について〕
 狭心症の薬物療法で、発作を予防する薬には、硝酸薬、ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬などがあります。また、ニコランジルには発作を予防するだけでなく、長期予後を改善する作用もあることが報告されています。再発を予防し、予後を改善する為に、狭心症などの冠動脈疾患では、禁忌がない限りアスピリン(抗血小板剤)を投与します。また、動脈硬化防止の為の高脂血症治療薬や血圧を下げる作用のあるACE阻害薬、ARBを投与することがあります。

〔狭心症患者の歯科治療について〕
 狭心症患者の歯科治療を行う場合には、内科医師への対診が大切です。医師からの返信には、狭心症患者の治療経過や現症、検査データ等が記載されます。この診療情報を基に患者の歯科治療をどうするのかを最終判断するのは歯科医師自身です。
 抜歯のケースでも、抗血小板薬の内服のままでの抜歯の施行が望ましいです。

[主な質疑応答]
1.歯科治療中、血圧が上昇した場合は歯科治療を中止して様子をみて下さい。降圧剤の投与は人によっては血圧が下がりすぎてしまう事があるので慎重になっていただきたいです。
2.狭心症の時に胸の痛みではなく、歯の痛みを訴える事があります。これは、支配神経が同じなので起こります。名古屋第一赤十字病院でも1年間に2人位、こういったケースがあります。
3.コーディネーターの加藤芳幸先生より「アスピリンやワーファリン服用中でもシーネを使用したりして止血をしっかりすれば抜歯可能です」とのアドバイスがありました。

[感想]
 歯科治療を行う責任は歯科医師自身にあるのですから、歯科医師も循環器疾患や他の多くの疾患に対する基礎知識が不可欠だと思い、新しい内科の成書を読み直す必要性を感じました。

ページ
トップ