(愛知保険医新聞2019年7月25日号)
資格確認の電子化やデータヘルス計画の具体化が相次いでいる。
5月に成立した医療保険関連法で、マイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入、医療と介護のデータの連結などが取り決められた。その後、5~6月にかけて、戸籍データを法務省システムでつなぐ戸籍法、行政手続きを原則電子申請に統一するデジタルファースト法などと法制化が続き、骨太方針2019、成長戦略実行計画などで矢継ぎ早にマイナンバーと連携するための具体化が進められている。7月には保険者・自治体関係者の協議会を設置し、保険者を巻き込んで医療分野でのマイナンバーカード利用促進を進める計画だ。
マイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入は、医療機関内でのカード紛失、番号漏えいが起きる問題や、医療機関がマイナンバーカード読み取りの対応を行う必要も想定される。政府は高額療養費限度額認定書発行業務の効率化や医療費控除で申請不要になる利点を挙げるが、被保険者資格情報と税関係情報が連結しないとできない仕組みであり、「マイナンバーと診療情報は紐付けしない」との政府説明に反する。
一方で、医療機関のオンライン請求の普及は歯科で17%、医科診療所でも65%に留まっており、歯科からは「可能という目算があるのか」(6月12日、社会保障審議会医療保険部会で日歯代表)、同会議で日医代表も遺伝子情報も含めた個人の機微情報が流出する懸念を示し「経済的利便性とは切り離して考えるべきだ」との意見が相次いでいる。
個別番号化される保険証でオンライン資格確認は可能であり、マイナンバーカードを医療現場で取り扱わせない取り組みが求められる。
患者にとっても、現在世帯単位である保険証番号を個人単位にすることで、例えば特定健診の内容によっては疾病を自己責任化し、窓口負担を引き上げることが可能になる点も見逃せない。すでに保険者に対しては補助金で差別化する動きが始まっている。
また、審査支払機関の機能強化として、支払基金や国保連合会に情報収集やレセプトデータ分析業務を追加することで医療費抑制を担う役割が強められることや、都道府県単位の支払基金の再編でコンピュータ審査が現状の6割から9割に拡大など機械的審査の拡大、保険者の意向に応じた査定が強められかねないことには注視が必要である。