2019年5月17日

今国会と憲法-改元に乗じた改憲強行は許されない

(愛知保険医新聞2019年5月5・15日合併号)

安倍首相は、一昨年の憲法記念日に、憲法九条に自衛隊を書き込むなどの明文改憲を持ち出し、昨年は国会に九条への自衛隊明記などの自民党案を提示し、改憲発議をめざしたが、市民と野党の反対で改憲スケジュールは思うように進んでいない。
しびれを切らした同党は、萩生田光一幹事長代行が4月18日、今国会で衆参両院憲法審査会が開かれていない状況について「(天皇の)譲位が終わって新しい時代になったら、ワイルドな憲法審査を自民党は進めていかないといけない」と述べ、与野党の合意がなくても一方的に憲法審査会での議論を強行する考えを示している。
自民党が昨年まとめた、「改憲四項目」の条文素案のうち、核心の九条への自衛隊明記は、集団的自衛権の無制限行使を含むものとされ、九条の戦力不保持や交戦権否認の規定が死文化し、自衛隊が海外での戦争に参加することになる。
緊急事態条項の創設は、災害などの緊急事態時に内閣が緊急政令を定めるとしているが、国民保護法で「災害」には「武力攻撃災害」として武力攻撃の場合も含むことが明記されている。法律に反する政令制定権を首相に与えるのは、戦前に天皇が軍隊の最高指揮権を持った「統帥権」と同じで、三権分立も侵す重大問題である。
安倍首相は4月23日には、新憲法制定議員同盟大会にメッセージを送り、「令和元年という新しい時代のスタートラインに立って国の未来像について真正面から議論を行うべき時に来ている」と、新元号を政治利用して改憲を進める強い執念を示している。
森英樹名古屋大学名誉教授・あいち九条の会代表世話人は、安倍政権が改元の祝賀ムードに乗じて、会期延長や消費税増税延期などあらゆる手段を講じてでも、今国会での改憲発議、国民投票強行のシナリオを諦めていないと指摘する。
共同通信社の世論調査(4月10日)では、戦力不保持と交戦権否認を定めた九条二項に自衛隊を明記する安倍首相案を支持したのは40%に留まった。安倍政権下での改憲には反対54%、賛成42%だった。国民の理解が深まっているとは言えず、国民が望まない改憲は決して許してはならない。
保険医協会は、「憲法を守り、生かす署名」に再度取り組み、関連してリーフレットを普及している。改めて多くの会員諸氏の賛同・協力をお願いしたい。

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