(愛知保険医新聞2019年10月5日号)
来年度政府予算概算要求で、社会保障費の自然増は、厚労省が出した5,300億円に対して、財務省サイドがさらに削ることを求めている。その財源として狙われているのは薬価引き下げ等による診療報酬改定だ。財務省などは、財政赤字の主因が社会保障費であるかのような理屈で社会保障費削減の手を緩めていない。
しかし、国家財政の厳しさの理由を社会保障費や医療費の増加に求めることは筋違いも甚だしい。今、大企業の内部留保が過去最高という一方で、国民の暮らしはますます厳しくなり、経済成長にはつながっていない現実がある。財政好転の財源を求めるならば、このような大企業などに負担を求めることが必要だ。また、医療や介護の分野は、雇用創出など地域経済を活性化する効果をもたらすことを指摘しておきたい。
中医協では、診療報酬改定の議論が第2ラウンドに入ったが、病院団体が入院基本料の引き上げを求めても、厚労省は引き上げに否定的な姿勢に留まっている。また、地域医療構想関連で診療実績や重傷者割合の要件変更などで機能分化を推進する部分には誘導的に診療報酬を盛る議論もあり、改定をめぐる環境は厳しい。さらに健保連は、花粉症薬を例に、市販品によるセルフメディケーションへの誘導が可能と考えられる医療用医薬品を保険適用から除外するよう提言している。
患者さんに提供する医療水準の担保や、医療従事者の技術の正当な評価、診療所や病院それぞれの医療施設の基盤強化のためには、診療報酬の大幅引き上げが必要である。2002年からの累次のマイナス改定で、引き下げ幅は10%以上にのぼる。次期診療報酬改定で私たちが堂々と10%以上の大幅な引き上げを求めることは最低限の要求であり、大義がある。
また、診療報酬の引き上げとともに、安心して受診できるためには、「患者窓口負担の軽減」は、不可分の要求である。しかし、政府は「75歳以上の窓口負担原則2割化」「痛み止めなど薬の保険適用除外」などの患者負担増を計画している。常に患者さんに寄り添う私たちが、患者負担軽減を強く求めていく必要がある。
改定率は、年末には決まる見込みである。協会では、診療報酬の引き上げと患者負担の軽減を求めて、医師・歯科医師要請署名に取り組んでいる。多くの医師・歯科医師の賛同をお願いしたい。