(愛知保険医新聞2024年7月5日号)
6月21日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針)」(以下、方針)を閣議決定した。方針では社会保障関係費の「歳出の目安」を基本的に維持し、「全世代型社会保障」構築を目指し改革工程に基づき着実に改革を行うとしている。しかし、診療報酬の実質6回連続マイナス改定等、この間の社会保障削減路線により医療関係職種の月給与平均が全産業平均を下回るなど、医療機関の経営状況は悪化している。国は今次改定で新設されたベースアップ評価料による賃上げ対応を強調するが、物価や人件費が高騰する中での実質マイナス改定は医療機関のさらなる経営悪化を招き、特に地方では賃上げどころか、医療提供体制の維持が困難な状況に陥っている。
医療提供体制を巡って方針では、「医師の地域間、病院・診療所間の偏在の是正を図るため、総合的な対策のパッケージを2024年末までに策定する」とし、その中で経済的インセンティブによる偏在是正に触れている。この間の財政制度等審議会の春の建議では、是正手段として診療報酬体系の適正化とともに、地域別診療報酬の必要性を指摘している。今回の方針には明記されなかったが、度重なる診療報酬の引き下げにより疲弊している医院経営に打撃を与え、混乱に陥れる一点単価切り下げの動きには断固反対する。
地域における医師不足は、地方を荒廃させる施策を推し進めてきた結果であり、医師の地域偏在だけ対策すれば解決する問題ではない。方針では2027年度以降、医師養成数の削減を検討するとしているが、開業医も含めた医師の過労死ラインを超える献身によって支えられている医療提供体制を、医師数をOECD並に充実することで補うべきだ。現在、2040年頃を見据えた地域医療構想について議論されているが、医師だけで無く地域住民が安心して暮らしていける医療提供体制を構築することが求められる。
今年10月から長期収載品の選定療養による差額徴収が予定されているが、方針では「薬剤自己負担の見直し」「保険外併用療養費制度の在り方の検討」が示されており、患者に多大な負担を強いる混合診療の拡大につながりかねない。介護保険でも利用者の負担増が検討されており、これ以上、物価高騰等により苦しむ国民に負担を強いることは許されない。国民の負担増や医療提供体制の崩壊につながる今回の方針は抜本的に見直すべきだ。