2024年5月27日

歯科診療報酬改定ー小規模歯科診療所の淘汰許すな

(愛知保険医新聞2024年5月25日号)

増税と裏金問題を抱える岸田首相は、起死回生策とばかりに各業界に賃上げ要請を推し進めてきた。医療界にはその一策として、今次改定で「ベースアップ評価料」を押し付けてきた。これは賃上げに使途限定された保険点数であり、さらに施設基準で賃金改善計画書の作成や実施後の報告が求められており、現場の実情を蔑ろにしている。本気で医療従事者の賃上げを目指すなら、保険診療の原資となる診療報酬の底上げが必要で、その手段として初・再診料など基本診療料や基礎的技術料の引き上げが最も合理的である。
今回の改定の大きな特徴の一つとして、「かかりつけ歯科医」という存在を強調するため、鳴り物入りで進めてきた「か強診」を廃止し、その内容を引き継いだ「口管強」に改変したことがあげられる。この施設基準には、「小児の心身の特性」の研修、エナメル質初期う蝕と根面う蝕の管理の実績が追加され、口腔機能の維持を含めて長期の口腔管理を実施するものとした。「口管強」の届出医療機関しか算定できない一物二価の評価が「か強診」同様に温存されたどころか、新設された管理料にも口管強を加算できるようにして、その差別的評価を拡大したのである。
次の大きな変更点は、「クラウン・ブリッジ維持管理料」(補管)の算定対象から金パラ・銀合金の単冠を外したことである。金属より強度的に劣るCAD/CAM冠等が対象に残されたことに疑問を感じる。強度で勝るジルコニア冠の保険導入はどうなったのであろうか? 「財源が無い」を連発する政府・厚労省だが、補管の100点を財源としても歯科技工関連項目の評価は置き去りにされている。歯科開業医はもとより歯科技工業界の苦悩はさらに続くだろう。それどころかこの補管外しをきっかけに、なし崩し的に厚労省や日歯が狙う選定療養の拡大(金属材料料などの保険給付外し)が危惧される。
一方、地道に進めてきた保険でより良い歯科医療の運動が一部反映された。生活歯髄切断や抜髄で歯科麻酔薬材料が算定可能となった。また「SPT」において、歯周病重症化リスクのある糖尿病患者を対象に「歯周病ハイリスク患者加算」の新設。また、ブリッジ支台歯の第二小臼歯にレジン前装冠が適用された。
最後に今回の改定から見えてくることは、医療DXについてこられない小規模歯科診療所は退場してもらって構わないという政府・厚労省の姿勢だ。許してはならない。

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