(愛知保険医新聞、2023年12月15日号「主張」)
いつになったら秋になるのだろうと、昨年は地球沸騰化を見せつけられた猛暑の年だった。WBCでの侍ジャパンの優勝、大谷選手の活躍、藤井八冠達成など、こちらはいくら熱くなっても構わない。中日新聞Web版の昨年の10大ニュースでは、パーティー券裏金疑惑、ジャニーズ性加害問題に続き、マイナカード問題が第3位となっている。
この問題では、昨年は保団連・協会の発するニュースを見ない日がないほど、「保険証残せ」の熱い運動が展開され、与党議員も含め賛同が得られるまでに至った。今年の12月に保険証を廃止しマイナ保険証に移行させるという閣議決定がされたが、方針撤回に向けて現場の声を届けながら、国民皆保険、人権としての医療アクセスを守るために幅広い国民的運動にしていく必要がある。併せてオンライン資格確認「義務化」、オンライン請求「義務化」により、地域医療を支える医療機関が廃業に追いやられることはあってはならない。
ウクライナ戦争に続き、イスラエルのガザ地区侵攻が始まり、すでにガザ地区で二万人が亡くなり子どもの墓場となっている。命と健康を守る医師、歯科医師は、武力で熱くなるのではなく国連憲章、国際法に基づく停戦を求めていく必要がある。また、日本の軍備増強も憲法の平和理念から程遠いものとなっており、これも看過できない。国内においても新年からの能登半島地震で、被害の甚大さ、国の備えの乏しさを見せつけられ、あらゆる支援が求められている。
感染急増と医療崩壊を繰り返した新型コロナは感染症法5類に移行した。日常的に感染症に対応している医療機関に対し、国は平時からインフラを整備、関連予算を確保し、流行時には臨時的に増強すべきである。
「失われた30年」の根底には新自由主義がある。厚労省「所得再分配調査」の当初所得は過去最大級に格差が拡がっており、再分配機能も不十分である。防衛費増強ではなく医療、社会保障、物価高対策こそ求められている。
今年は診療報酬、介護報酬等改定がある。医療機関の経営を守り、会員に寄り添う、頼りになる保険医協会となり、これまで以上に熱い運動を展開していきたいものである。そして、保険医新聞が機関紙として情報をいち早く届けると同時に、楽しい記事や役立つ情報で、より一層親しまれるよう、紙面づくりに取り組んでいく決意を新たにしたい。