2023年12月21日

医薬品の安定供給を求める要望

日頃の住民の健康を守る活動に敬意を表します。
愛知県保険医協会は開業医を中心とする医師・歯科医師の団体で、愛知県内医科開業医の8割、歯科開業医の6割にあたる9,100人の医師・歯科医師が加入しております。
2021年に小林化工、日医工が製造不正等によって業務停止命令を受けたことに端を発する後発品を中心とした医薬品の供給不足は、現在も解決していません。
日本製薬団体連合会が公表した「医薬品の供給状況にかかる調査(2023年10月)」によれば、全医薬品の23.7%が限定出荷・供給停止の状況にあり、後発品に限ると33.0%に上ります。特に、基礎的医薬品の12.9%、安定確保医薬品の25.3%が限定出荷・供給停止となっています。この状況は直近の3カ月でも悪化しており、地域医療に深刻な影響を及ぼしています。
当協会が11月に実施した会員アンケートでも、『11月現在で「処方できない」または「処方が困難」な医薬品がある』との回答が82.3%(中間集約)となっており、咳止め薬や去痰薬を中心に日常診療で用いる医薬品が処方できない事態となっています。現場の医療機関では他剤への変更や投与量・処方日数を減らすなどの対応を余儀なくされています。また、こうした状況を患者さんに説明・ご理解いただくことが増え、在庫確保や処方変更の依頼、代替薬の採用検討などにより、医療機関の業務負担が増えています。さらに、一部には患者の病状悪化を招いているとの回答もあります。
医薬品の安全確保・安定供給は、製薬企業が責任を負うことは前提ですが、ここまで問題が長期化している背景には、後発品中心の薬価引き下げによる医療費削減、不採算状況による製造体制の不安定化、安定供給体制が確保されないままの政府の強引な後発品促進策などが挙げられます。前述の当協会アンケートでも、「医療費抑制に伴う薬価抑制政策が行き過ぎたことが諸悪の根源」との指摘があります。この状況は、根本的には、国の社会保障費抑制策によって生み出されたものです。国としてこの誤りを認め、公的医療提供に責任を負う立場として、医薬品の安全確保・安定供給に必要な対策を講じることが求められます。
つきましては、国として以下のような対応を実施するよう要請します。

1. 医薬品の安定供給に向けて、医療費抑制に伴う薬価抑制政策を撤回し、国として責任を持って必要な対策を講じること。
2. 医薬品の安全確保・安定供給のために、製薬企業への指導・監督を強化すること。
3. 患者・国民に医薬品供給不足の状況を周知し、処方変更等が起こり得ることを丁寧に説明すること。

以上

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