事通信社とNHKなどが発表した最新の世論調査の結果によると、岸田内閣の支持率は続落(時事通信27%、共同通信35%、NHK38%)し、昨年10月の内閣発足以降過去最低を更新した。いずれも不支持が支持を上回っている。旧統一協会をめぐる岸田首相や自民党の対応への批判が8割を超えるとともに、安倍元首相の国葬を「評価しない」も6割を超えている。物価高で生活が「打撃になっている」が8割近くであり、政府の物価高騰対策を「評価しない」が5割近くなど、多くの国民が物価高への不満を示したのが特徴だ。
10月3日の臨時国会所信表明演説で岸田首相は、国民の厳しい声に「真摯に謙虚に丁寧に」向き合うと強調した。「聞く力」をうたう首相の言葉とは裏腹に、聞くべき国民の声を聞き流し、やり過ごそうという姿勢を国民は見透かしている。
12月10日までの臨時国会では、①「国葬」や旧統一協会問題に対して、説明責任を果たせるのか、②物価高から暮らしを守る対策を示せるか、③政府の来年度予算案審議で大きな焦点の防衛費の急拡大を許すのかーーが焦点となっている。
物価高に関しては、諸外国ではコロナ禍と物価高騰の下で97の国と地域が付加価値税(消費税)減税の実施(予定含む)へ踏み切っている。落ち込んでいる実質賃金を引き上げるとともに、消費税の減税が最も有効な対策である。このほかに、臨時国会では75歳以上の窓口負担2割化の凍結措置や、特別給付金等の拡充など実効性ある対策を早急に具体化すべきである。
防衛費は、政府・自民党内でGDP比2%(2022年度予算は1.09%)に引き上げ、5年総額43兆円もの大軍拡が議論されている。財源について、9月末の政府有識者会議では「国民全体で負担することが重要」「既存の歳出削減と合わせて具体的な議論が急務」などと、消費税の増税や社会保障費など国民の暮らしに直結する分野の切り捨てにつながる議論も行われている。事実、高齢者の医療保険料引き上げや介護保険の負担増などが、厚労省の審議会で議論されている。
それにしても、オンライン資格確認「義務化」や保険証の廃止方針の表明など、国会での議論を抜きに意思決定が進められようとしている。前述の世論調査には、民意無視、国会軽視の政府の姿勢への国民の厳しい目線が示されている。国会がやるべきことは山積している。
2022年10月27日