2022年10月17日

原発政策-新増設・再稼働は 許されない

岸田首相は8月、「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、原発の新増設、再稼働、建て替え、運転延長を含む新たな原発方針を発表した。ロシアのウクライナ侵略による国際的なエネルギー不足と、日本国内の電力逼迫に備え、脱炭素化を加速しつつ、将来的な電力安定供給をめざすためという。具体的には、運転期間の延長など既設原発の最大限の活用、次世代型原発の開発・建設、これまでに再稼働した10基に加え、福島事故当事者の東電・柏崎刈羽を含む七基について、「国が前面に立って」再稼働を進めるというものである。
これは昨年10月「エネルギー基本計画」で「原発は可能な限り依存度を低減する」としてきた、従来の政府の原発政策からの逆行である。「エネルギー基本計画」策定は、少なくとも専門家の議論をもとに公開で行われた。今回の会議は非公開で、どんな議論がされたのか不透明で、民主的に行われたのかも大いに疑問だ。
そもそも、脱原発・再生可能エネルギーへのシフトは世界の流れである。それは取り返しのつかない被害をもたらす過酷事故を経験、使用済み核燃料最終処分場探しの困難さ、テロ標的の危険、紛争時攻撃対象となるなどを見てきたからとも言える。福島からの何万人もの避難者が、11年経っても故郷に帰れない。「廃炉は40年で完了」は幻となりつつある。このような現状をどうみているのか。「原発回帰」は全く許されない。
他方、6月の福島原発事故損害賠償の住民集団訴訟、最高裁判決で国の責任は否定されたが、4人の裁判官のうち1人が反対意見を書いた。それは、人の生命は経済的利益に優るとの意見であった。まともな意見である。また7月の東電株主代表訴訟の東京地裁判決では、被告経営者4人に過失を認め計13兆円という、巨額の支払いを求めた。リスクを伴う原発の経営は不可能、と知らしめる判決であった。私たちはこのようなまともな意見、司法判断を歓迎する。国民の願いに沿うものだからである。
私たち、国民の命と健康を守る医師・歯科医師は、原発再稼働・新増設・運転期間の延長に反対し、あくまで原発ゼロをめざす運動を粘り強く進める決意である。

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