(愛知保険医新聞2022年3月25日号)
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響で原油が大幅に高騰している。歯科材料も値上げされるが、ここ2年続くコロナパンデミックで世界のサプライチェーンが十分に機能せず、歯科材料の入手も困難になりつつある。さらにウクライナ侵攻に絡み、金パラの急激な高騰が起き、日常の歯冠修復治療を躊躇せざるをえない状況が生まれている。長年の各協会・保団連の取り組みにより、「金パラ問題」は今回の改定で一定の改善点が示されたが、今の異常な状況は放置できない。愛知協会は3月11日、政府に歯科医療機関への補助金支援など緊急の対応を求める要請書を堤出した。
ところで、今次改定は歯科医療現場の困難をまったく見ていない。政府はこの五年、「骨太の方針」で歯科重視をアピールしているが、改定率は、前回、前々回の半分にも届かないプラス0.29%だった。コロナ禍で鮮明となった歯科医療の役割を口先だけで唱えられても、歯科の窮状は解決されない。標準予防策や新興感染症への対応として、初再診料が3点引き上げられたと言われるが、その原資はP基処の廃止である。このやり方を「財政中立」といい、医療の財源枠の中でやりくりするわけだ。SPT一本化については、算定要件の整理を求めた保団連の要求が実現した。しかし、算定期間の短縮については「か強診加算」に形を変え、同じ診療行為を行っているにもかかわらず算定点数に差がある一物二価は残されたままだ。か強診とそれ以外の医療機関の差別は温存されている。このか強診による差別の弊害は、ここ1年で全国約68,000施設ある歯科医療機関の1%にあたる個人開業の726施設が閉院していることに表れている。日歯「2040年を見据えた歯科ビジョン」でも「歯科診療所の継承が円滑に進まない実態があり、地域差はあるものの、持続的な歯科医療提供の確保が困難になりかねない」と述べられているにも関わらずだ。
最後に、マイナンバー制度の普及推進として、マイナンバーカードを用いた資格確認を行った場合の「電子的保健医療情報活用加算」が新設された。オンライン資格確認システム導入に向け、「馬の鼻面に人参をぶら下げる」手法をとってきたが、医療費を使ってのマイナンバー制度の普及は容認できない。
保団連・保険医協会は歯科医療の窮状打開に向け、保険で良い歯科医療の取り組みのなかでも「歯科医療費の総枠拡大」が必要であることを訴えてきた。今や、全国で106名もの国会議員が、この請願署名の紹介議員になったことを付け加えておく。