(愛知保険医新聞2022年3月15日号)
過去最大を10年連続更新した総額百7兆円の政府予算が、2月に衆院を通過したため年度内に成立する。
税収では消費税が最多の税目となるものの、社会保障予算は自然増を削っている。自然増2,200億円の内訳は、診療報酬マイナス改定分1,620億円と10月からの75歳以上2割負担化による国費削減300億円が占めている。
コロナ対策予算は、5兆円を計上しているが、ほとんどが2021年度の補正予算分で、2022年度当初予算は800億円に満たず、医療提供体制確保は20億円、検査体制やワクチン接種体制確保は112億円しか計上していない。政府のコロナ対策の本気度を疑う内容だ。昨年末のPCR検査の評価引き下げや感染防止対策の特例廃止、小児の感染防止の特例も3月で廃止など、医療逼迫に喘ぎながら懸命に頑張り続ける医療機関への支援策は後退の一途であり、医療機関や介護施設への減収補填や中小業者への事業支援、給付金は盛り込まれていない。対照的なのは、コロナ対応病床不足がいわれる中、病床削減や統廃合を促す病床機能再編支援は引き続き推進で、1,700億円余りを計上している。
看護職・介護職などの10月分以降の賃上げを盛り込んでいるが、看護職員の処遇改善の対象となるのは、救急医療管理加算を算定する救急搬送年200台以上の病院や三次救急担当の病院の看護職員という極めて一部医療機関に留まり、財源も診療報酬や介護報酬に求めているあたりは保険料や利用料負担に跳ね返る仕組みで、国庫負担での改善を求めたい。
このほか、10月から雇用保険の失業等給付の保険料率引き上げを行い、労使ともに負担を増やす一方、国庫負担は本則の25%に遠く及ばない2.5%に留めていて問題である。また、公的年金額は0.4%引き下げる。厚生年金で夫婦2人のモデル世帯で月900円以上の給付減である。食料品や灯油の高騰でダブル・トリプルの冷たい仕打ちが容赦なく行われる。
熊本県に計画する半導体企業には4,000億円も補助金を投入するように、大企業には大盤振る舞いの予算構造が目立つ。石炭火力・原発推進の予算構成も問題である。さらには、10年連続増額の防衛費はついにGDP比1%枠を突破し、複数年度に分割払いする後年度負担の防衛費も当初予算を超え5.8兆円に達するなど、予算の使い道が歪んでいる。