2021年11月7日

診療報酬-医療現場の声を聞き大幅引き上げこそ必要

(愛知保険医新聞2021年11月5日号)

診療報酬の来年4月改定に向けて、中医協では個別項目の議論が始まっている。最近の改定は、財務省主導で改定率が決められ、中医協は総枠が決められた範囲での議論を強いられている。中医協の外で外来や入院機能などの議論が医療関係者不在で行われているのも看過できない。
10月11日の財政制度等審議会では、医療従事者の分散や外来での新型コロナ疑い患者を断る例などを挙げて、医療逼迫の原因を医療現場に押付けている。解決策として「報酬制度を見直し、『一入院あたり定額払いの創設』」「地域住民あたり定額の診療報酬制度を創設」などを掲げた。
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部会合では、病床確保に関して「いわゆる『幽霊病床』の実態を把握し…(中略)…病床使用率について、少なくとも8割を確保」などの方針を示している。多くの病院は医師・看護師不足や建物の構造上コロナ対応が困難な中、コロナ病床を確保しているという現状を踏まえない悪意のある指摘といわざるを得ない。わずかながら評価されていた医科外来等感染症対策実施加算や入院感染症対策実施加算は九月末で廃止され、コロナ患者受け入れ医療機関のみの評価に切り替わった。
診療報酬は医療の質を決めるものである。地域医療体制は、コロナ患者を受け入れている医療機関だけでなく医科・歯科問わずすべての医療機関によって支えられている。診療所もコロナ対応では発熱外来、往診、在宅医療、ワクチン接種などで大きな役割を発揮している。地域医療体制充実のため、感染症対策評価を含めた初再診料などの大幅引き上げが喫緊に必要である。
協会が取り組んでいる「疲弊した医療提供体制を立て直す診療報酬改定を求める医師・歯科医師要請署名」では、「感染予防にかかる費用を正当に保険点数に入れて」「コロナのための患者数激減により職員の賞与を減額せざるを得ず、退職者も出てスタッフ一同疲弊」「高齢化の中で、病状把握、内服薬(他院を含め)の確認、治療内容説明など多岐にわたり時間・注意が必要であり、基本診療料を大幅に引き上げることが必要」「消毒費用、また医療廃棄物の処分費用が急激に増大しています」「いまだに来院患者数・レセプト枚数とも2019年の水準に戻りません。このままではもうすぐ財政破綻します」など切実な声が寄せられている。
医療現場の声を聞き入れ、診療報酬大幅引き上げを求める署名に会員各位の賛同をお願いしたい。

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