2021年7月29日

骨太方針-社会保障充実に舵を切る政策転換を

(愛知保険医新聞2021年7月25日号)

コロナ禍で東京は4度目の緊急事態宣言となり、ほぼ通年で緊急事態か蔓延防止等重点措置が出続けている。市民は旅行も飲食も自粛を求められ続け、暮らしや営業は疲弊の限りとなっている。それでも、東京五輪は強行することに、市民感覚として「なぜ五輪はいいのか」となるのも無理はない。各種世論調査に示される政治への不満・不信は、コロナ禍にまともに対策を講じず、五輪優先の姿勢にこそあるのではないか。
6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)は、コロナ禍で疲弊した医療・社会保障への支援拡充や国民の生活支援に背を向けたもので、来年度予算編成の指針とするものだが、この政権のもとで予算編成を許していいのか、政治の基本の転換が求められる内容となっている。
「包括払い」も活用した病床・病院削減を図る「地域医療構想」や、都道府県の医療費削減を促す「医療費適正化計画」の推進をはじめ、75歳以上医療費窓口負担2割化法が成立したばかりなのに、早くも次の負担増も促している。来年の診療報酬改定に向けて、包括払いの在り方の検討も含めた医療提供体制のための診療報酬体系の見直し、診療所も含む外来機能の明確化・分化の推進、既収載医薬品の保険給付制限・給付外し、医師の診察を事実上薬局薬剤師に委ねるリフィル処方箋の導入などは、医療サービスの質に関わる重大な問題である。
税制では、「応能負担の強化等による再分配機能の向上を図りつつ経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、税体系全般の見直し等を進める」とした。折しも、G20や130カ国・地域は国際的な法人税最低税率15%以上で合意した。骨太の方針の掲げた「応能負担の強化」「税体系全般の見直し」がこのような国際的な課税見直しに即した形で法人税や富裕層への課税強化になることを期待したい。しかし、財政制度等審議会などでは、消費税増税の要望もあり、財界にも社会的責任を求める政府の対応が求められる。
社会保障の充実には消費税増税しかないというような印象操作をきっぱり転換すべきである。保団連が掲げる(1)社会保障は「所得の再分配」、(2)大企業・富裕層は社会的責任を果たすべき、(3)社会保障の充実で経済の好循環へ――を今こそ大きく掲げて、政治の基本の転換を求めたい。

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