(愛知保険医新聞2021年10月25日号)
4月から全国の協会で取り組んできた「保険でより良い歯科医療を」の署名運動が大詰めを迎えている。この請願署名は、来期の診療報酬改定に向け、歯科の分野から日本の医療を国民本位のものに近づける役割を持つ。愛知協会ではこの運動を通じて多くの貴重な経験が生まれた。
その一つが、歯科だけでなく医科会員の方々に多大な協力を頂いたことである。保険医新聞に声を寄せていただいた医科の先生は、「我々がいくら考え悩んでも、その声を政治の場に届けなければ何も変わりません。そういった声を拾い上げ、形にして、国民の声として国に届ける活動は大変重要だ」と語っている。
先日、野党の国会議員に、第204通常国会で「子どもの歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願」が、全会一致で初めて採択された経緯について話を聴く機会があった。多くの国会議員は医療現場で起きている問題、例えば歯科での「金パラ『逆ザヤ』問題」についてもその中身をほとんど知らない。この状況を打開するためには、現場を担当する医療者が、何度も足を運び説明することが大切だという。国会議員は、そうして私たちの声に耳を傾け、現場で起きている問題を理解する。この時、患者・国民の声として請願署名が積みあがると議員への伝わり方が違う、とも。
何年も前に私自身が経験した国会行動を思いだした。議員と直接面会し請願引き受けを依頼した折、議員は何度も署名の束を繰返し捲り、呻吟したのち「よろしい、引き受けましょう」と力強い声で署名引き受けを承諾した。議員の決意は、私たちの強く継続的な働きかけが後押しした結果だろう。
第二の経験は、待合室のよく目が届くところに署名用紙とリーフレットを置き、受付にポップアップ、掲示板にポスターを張るだけで自然に署名が集まるということだ。署名活動というと無理に肩肘を張って取組まなくてはと思いがちだが、肩の力を抜いて自前のやり方でアプローチすれば良い。
三つ目は、それぞれの先生が所属する勉強会や協力関係にある地域の団体にお願いするだけで、たくさんの署名の協力が得られるということだ。日頃から地域で歯科医療・医療に真摯に取り組む姿勢が、信頼を獲得しているからこそであろう。
いよいよ残り1カ月、保険でより良い歯科医療実現のため、ラストスパートを掛けよう!