2021年5月27日

新自由主義の転換-新型コロナとの戦いで国民が主役に

(愛知保険医新聞2021年5月25日号)

「このまま行くと経営破綻」今年3月に行った第6回会員アンケートに寄せられた声だ。新型コロナ感染症が長引き、診療や経営に深刻な影響が出ている。外来患者減少、受診控えによる発見の遅れ・重症化、感染防護具の価格高騰、それに加えて歯科では金パラ逆ザヤが収支を圧迫している。
「早く死ねということか」75歳以上窓口負担2倍化撤回を求める請願署名に寄せられた声だ。国会審議で野党が再三求めて厚労省がやっと出した研究論文では、糖尿病は治療中断が失明など重度の合併症につながるため負担軽減こそが必要だと提起していた。菅首相の「健康に影響しない」などという答弁は全くデタラメであった。現役世代の負担軽減といいながら、最も減るのは公費負担分であり(980億円)、現役世代は1人あたり年350円に過ぎない。若い世代の軽減はダシに使われた。
社会保障削減は続くよ、どこまでも。2021年度予算でも1,300億円の自然増削減がなされた。安倍政権以来の9年間だけでも2兆円になる。その一方で防衛費は5.3兆円と過去最大を7年更新した、これも続いている。
新型コロナ対策は予備費の5兆円のみである。PCR検査拡大、保健所の体制強化、病床確保の予算はどこにもない! それどころか病床削減した病院に財政支援として195億円が盛り込まれた。コロナ病床を確保しろと言いながら統廃合を進めるのはアベコベである。
負けられない綱引き。コロナ禍で医療の脆弱さが明らかになった。充実を願う国民と、惨事に乗じて削減を狙う財政審との戦いに負けるわけにはいかない。敵曰く、国民医療費の伸びは診療報酬改定・医師数のせいである。また曰く、病院病床が多いから医療がひっ迫する。これらは初歩的な「統計でウソをつく法」である。国民医療費に含まれる企業負担を少なくしたいだけである。今でも日本の事業主保険料が社会保障に占める割合は欧州福祉国家に比べて約半分である。病床当たりの職員数は欧米に比べて五分の一~三分の一と少ない。患者を治療するのはベッドでなく、医師や看護師である。
政治の転換で社会保障の充実を。新型コロナとの戦いに出口が見えない原因が、命と暮らしを粗末にする政治、貧困と格差を拡大する新自由主義であることが明らかになった。日本の社会保障支出GDP比は低すぎる。国の税収に占める消費税の割合が高すぎる。1%の支配層の腐敗、堕落、無能力が明らかになった今、99%の我々国民が社会の担い手になるべきである。

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