(愛知保険医新聞2021年7月5日号)
第204回通常国会が閉会した。開会、閉会のどちらも緊急事態宣言が発令されるなかであったことは、適切なコロナ対応をすべき時に行ってこなかった菅政権の失政を象徴している。日本におけるPCR検査数(人口100万人当たり、4月19日現在)はOECD加盟37カ国中36位、世界では145位だ。ワクチン接種率(4月19日現在)もOECDで最下位、世界では136位と際立って少ない。
この国会で成立した2021年度予算は、コロナ対策と呼べるものは予備費の5兆円程度と全く不十分だ。コロナ禍で医療提供体制や社会保障の脆弱さが浮き彫りとなったにも関わらず、社会保障費の自然増1,300億円を削減した。一方で軍事費は過去最大の五兆3,000億円超を計上するなど、国民の暮らしを顧みる姿勢が全く欠如している。
75歳以上の医療費窓口負担2割化法案も成立した。政府は高齢者の受診抑制が起こると認めたにも関わらず短時間の審議で採決を強行した。さらに、6月発表の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)では、2割化の対象を年収200万円以上(単身世帯)からさらに範囲を拡大すると宣言している。一方、この負担増計画の実施時期や対象範囲は政令で定められるもので、運動で延期・縮小させなければならない。
5月には病床削減計画である地域医療構想を推進する医療法改正法も成立した。コロナ患者を受け入れ奮闘する公立・公的436病院の統廃合リストを撤回することもせず、消費税を財源に195億円を投入する補助金制度を設けて病院・病床削減をさらに進めようというものだ。コロナ禍の教訓を無視して固執する姿勢は異常だ。
この間、コロナ禍に乗じ強権的な改革が推進されている。5月成立のデジタル改革関連法では、行政のデジタル化を通じて集まる医療・製薬・保険などの個人情報を企業が利活用できる仕組みが拡大されるとともに、個人情報保護が大きく後退させられた。国と自治体の情報システムの共同化・集約が進むと、医療費無料制度など自治体独自施策の障害となる恐れがある。憲法をめぐっては緊急事態条項の必要を喧伝するなど改憲に向けた策動が強まっている。
感染拡大の危険が非常に大きな五輪を、国民の命と健康を犠牲に強行しようとする姿勢こそ菅政権の本質だ。総選挙で悪政に終止符を打ち、社会保障と平和を守る新しい政権をつくろう。