【21.04.9】新型コロナウイルス感染症のワクチンに関して接種遅延に抗議し、自国生産拡大や医療従事者への財政支援などを求める
新型コロナウイルス感染症拡大が収まらない中、収束への有力な手段としてワクチンへの期待がありますが、先行接種予定の医療従事者への接種は大幅な遅れが生じています。
現在の日本のワクチン供給は、アメリカやイギリスのメーカー製ワクチンの輸入に依存している状況です。EUは域内で製造する新型コロナワクチンについて「輸出透明性・許可メカニズム」という域外に対する実質的な輸出規制を実施し、このことが日本へのワクチン供給の遅れの一因と考えられます。
この間、パンデミック級の感染症危機は約10年に1度の割合で発生しており、WHOも「現時点において人類に知られていない病原体であって、将来のある時点において人類に危害を及ぼし、国際的に蔓延する恐れのある感染症」(「Disease X」)への対策を呼びかけています。Disease Xが発生した場合には、それに特化した診断薬・治療薬・ワクチンの開発が必要ですが、我が国のこれらに対応した予算は欧米や中国の10分の1以下ともいわれ、早急で大幅な改善が欠かせません。今後、全く別の病原体に見舞われることも考慮すると、どのような感染症危機が発生しても対応可能な基盤技術の研究開発に対し、継続的に予算化する必要があります。
国民の命と健康を守るワクチンの開発や生産を海外に頼っている現状やそれに伴う国内のワクチン接種の遅れに対して、政府への抗議を表明し猛省を求めるとともに、ワクチンの自国開発・生産に力を入れることを求めます。
また、具体的なワクチン接種にあたっては、従事する医師・看護師の確保が思うように進まない現状も障壁になっています。さらに、ワクチンがいつ、どれだけの量が届くか、自治体にも医療関係者にも必要な情報が行き届いていません。ワクチン接種従事者への財政支援と迅速で正確な情報提供が必要です。
世界的なパンデミックの収束のためには、日本や世界の人々にワクチンや治療薬を供給できるようにすることも重要です。WHOは「ワクチン接種の75%が先進10カ国に集中し、130の国ではワクチンすら受け取っていない」と指摘しています。ワクチンを富裕国が買い占めや政治的利用を行っていては世界中に普及はできません。共同購入して途上国を含めて公平に分配する国際的枠組みを広げるなど、日本の積極的な貢献を求めます。
2021年4月9日
内閣総理大臣 菅 義偉殿
厚生労働大臣 田村 憲久殿
経済再生担当大臣 西村 康稔殿
内閣府特命担当大臣 河野 太郎殿
愛知県保険医協会
理事長 荻野高敏