2021年4月14日

政府予算-コロナ禍でも社会保障削る冷酷

(愛知保険医新聞2021年4月15日号)

2021年度政府予算が3月26日に参院本会議で可決・成立した。一般会計総額は106兆6,097億円で過去最高となった。
「安倍政権の政策を継承する」と発言した菅首相は、社会保障で1,300億円の自然増削減を行った。安倍政権以来の9年間での削減額は累計2兆円に達することになる。1,300億円のほとんどは診療報酬の薬価部分を削減するものであり、他にも年金支給額が500億円程度削減される。
新型コロナウイルス感染症対策と呼べるものは予備費の5兆円程度である。感染が再び急拡大するなかで「第4波」を抑え込むためには、PCR検査数の拡大や保健所の体制強化、病床確保が欠かせないが、実現には5兆円では不充分だ。
さらに病床削減を目標とする地域医療構想の達成に向け、病床削減をした病院に財政支援を行う病床機能再編支援制度に195億円が盛り込まれた。この支援制度はこれまで政府が「増税分は社会保障のために使う」と繰り返してきた消費税が充当される点でも許しがたい。コロナ禍でも病床削減を進める政府の姿勢は誤りであり、病床数の維持と拡充を強く求める。
また、ワクチン接種を進めるためには携わる医師・看護師の体制確保が不可欠だが、医療機関は減患・減収で余裕がある状況ではない。医療機関への減収補填はワクチン行政を支える観点からも急務であり、速やかに実施すべきだ。
3月実施の協会の緊急会員アンケートからは、長期にわたる減収が医療機関に深刻な経営困難をもたらしていることが明らかになっている。減収補填などの手立てを取らず、医療機関の自助努力だけに委ね続ければ、経営が立ち行かなくなり地域医療の崩壊につながりかねない。
一方、軍事費は5兆3,422億円で過去最大となった。イージスアショアを代替する新型護衛艦やF35戦闘機購入などに加え、長射程ミサイル導入や護衛艦の空母化改修など、敵基地攻撃が可能となり専守防衛を逸脱する装備が予算化されている。
2022年度予算ではあるが、政府は75歳以上高齢者の医療費窓口負担を2倍化する法案を提出している。病気を抱える人が多い高齢者の受診抑制を招くものであり冷酷だ。
秋までに行われる解散総選挙では、社会保障の充実を優先政策とする政党・候補者を選びたい。

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