(愛知保険医新聞2021年3月25日号)
4月に3年に一度の介護報酬の改定が行われる。今回の改定率はわずか0.7%の引き上げで、そのうち0.05%は、新型コロナ感染症に対する9月までの時限的措置分となっている。前回2018年改定もプラス0.54%に留まり、2015年改定は2.27%のマイナス改定であったが、深刻な介護現場の改善を行うには、今回の引き上げ幅では全く不十分である。
改定については、告示・通知がようやく3月15日・16日に発出されたが、改定の周知期間は十分確保されていない。改定の周知徹底、届出の提出期限の延長などを行うべきである。
今回の改定は、(1)感染症や災害への対応力強化、(2)地域包括ケアシステムの推進、(3)自立支援・重症化防止の取り組みの推進、(4)介護人材の確保・介護現場の革新、(5)制度の安定性・持続可能性の確保――を柱に行われたが、感染症対策の指針の整備や委員会の開催、事業継続計画(BCP)の策定、介護分野のデータベースへの情報の提出、介護職員の認知症介護基礎研修の受講など、事業所や介護従事者に新たな負担を強いる内容も多く含まれている。
医療系サービスでは、居宅療養管理指導費が「単一建物居住者が月10人以上」の場合の報酬が一部引き下げられている。居宅療養管理指導費は、患者一人一人に対する居宅療養上の指導や他の事業所との連携を評価したものであり、移動時間や滞在時間の効率化を理由に単一建物居住者数で報酬を減額する仕組みに合理性はない。
施設サービスでは、介護療養型医療施設を2023年度末で廃止し介護医療院への移行を進めるため、介護療養施設サービス費を引き下げるとともに、一定期間ごとの検討状況の報告がない場合はさらに減算するなど、露骨な政策誘導が行われている。しかし施設や人員基準などから、今年度の厚労省調査でも約半数の施設が「引き続き介護療養型施設を選択」あるいは「移行は未定」と回答し、対応ができていない状況が明らかとなっている。実態を無視した強引な改定は行うべきではない。
2000年に始まった介護保険は、21年経った現在も報酬が低く事業所は厳しい運営が続く。コロナ禍のもとで、介護の担い手の確保や必要なサービス提供の継続がますます重要となっている今こそ、介護職員の処遇改善や求められる介護サービス向上のために、更なる介護報酬の引き上げが必要である。