2020年12月6日

マイナンバーカード-「保険証発行停止」提言に抗議

(愛知保険医新聞2020年12月5日号)

自民党のデジタル社会推進本部は、健康保険証を将来的に廃止しマイナンバーカードに一本化する提言を取りまとめた。菅政権は、目玉政策の一つである「デジタル庁設置」により、「国、自治体のシステムの統一、標準化、マイナンバーカードの普及、促進を一気呵成に進め」たいとしている。提言は、普及率が22.3%にとどまっているマイナンバーカードを無理矢理に普及させようとするものであり、あまりにも乱暴ではないか。
政府は2021年3月からマイナンバーカードを健康保険証としても利用できるようにし、医療機関の窓口でのオンライン資格確認をスタートさせようとしている。8月からは「顔認証付きカードリーダー」などオンライン資格確認のインフラ整備への補助金受付が始まった。しかし申込数は医療機関の17%にとどまっており、この現状に政府は年度内に申請すれば、診療所だと約40万円を基準費用とした3/4の補助を満額補助する方針も打ち出した。
システム導入には慎重な対応を
しかし、現在の保険証がなくなるわけではなく、厚労省は、オンライン資格確認の導入は義務ではなく、導入するかどうかは医療機関の任意と説明している。協会はマイナンバーカードによるオンライン資格確認への対応は慎重に行い、補助金の申請期限は2023年6月までなので当面様子を見ることを呼びかけている。
保険証と同じように常時持ち歩く人が増えれば、個人情報の漏洩や悪用の不安があるマイナンバーカードを紛失した場合のリスクは計り知れない。医療機関窓口では、資格確認にかかる業務量が増え、窓口業務が停滞する恐れがあるばかりでなく、医療機関にマイナンバーカードが持ち込まれれば、紛失や番号漏洩などのリスクも生じる。
何よりもコロナ禍のなか、オンライン資格確認のシステム導入や維持管理のために多額の設備投資をしなければならない。医療機関がこうした負担に耐えられるのか。まずすべきは、地域医療体制を守るため医療機関の減収補填策を講じるべきではないか。
マイナンバーカードの申請・所持は任意だ。患者には従来通り保険証の確認で診療ができることを伝えるなどの工夫を行い、医療機関にマイナンバーを持ち込ませないことが大切だ。

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