2020年10月28日

新型コロナ対策-「効率化」の限界 体制の抜本的な拡充を

(愛知保険医新聞2020年10月25日号)

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は収束が見通せない状況が続いている。新型コロナウイルス感染拡大の影響はすべての医療機関の経営に及んでおり、対策は急務だ。地域医療を支えているのは発熱患者などを受け入れている医療機関だけではない。医科・歯科すべての医療機関を支援することこそが地域医療の崩壊を防ぎ、新型コロナウイルスの流行に備える最善の策である。支援については既存の制度の要件緩和などに加えて、経営支援として概算払いを認めることなどを求めたい。
すべての医療機関を対象に感染拡大防止対策に要する費用を補助する「感染拡大防止等支援金」については愛知県内での申請が広がっていない。複雑な申請方法に加えて運用面でも対象となる項目が明示されないなど医療機関が申請に二の足を踏む状況となっており、早急な改善が必要である。
発熱患者を受け入れる「診療・検査医療機関(仮称)」に対する「発熱外来診療体制確保支援補助金」は、申請方法や制度内容が複雑であるだけでなく、発熱外来の受診者が増えると減算になり、1日20人以上の受診があった場合は補助額がゼロになる仕組みで、現場で大変な思いをしている医療機関が報われるよう見直すべきだ。
検査体制の拡充も喫緊の課題だ。愛知県は新たにドライブスルー方式の検査所を設置するなどの対応をしているが、この間の感染拡大期には濃厚接触者でも検査を受けることができない事例や、医師が検査が必要と判断した方への検査が遅れる事例が多発しており、更なる体制の強化は最優先の課題である。
地域医療構想をはじめとする、医療提供体制についてもこの機会に抜本的な見直しが必要だ。新型コロナウイルス感染拡大で日本の医療提供体制の脆弱さが改めて浮き彫りになった。これまで国が進めてきた「効率化」による病床削減・再編では感染症の流行に対応できないことは明らかだ。しかし、厚労省は病床削減計画を撤回するどころか、積極的に進める姿勢である。病床削減計画を撤回し、新興・再興感染症の流行にも対応できる体制に抜本的に見直すべきである。
世界で人の移動が大幅に増加している現在、感染症対策は国の安全保障としても重要だ。保健所の体制を抜本的に強化することなども含め、国は効率化の名の下に進めてきた政策を今すぐ転換する責任がある。

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